#02赤の迷走 E
あれから暫く経って19:00になり、晩ご飯中の“碧”一行。まるで普通の家庭の日常のように過ぎていく時間に、ソレイユはまだ疑っていた。
本当に、S級犯罪者なのか…?
「ああ、そうだわシアン。例のアレ、調べといたわよ」
何かを思い出したように口を開いたマゼンタは、シアン目掛けて数枚の書類をバシッと投げ突ける。シアンが綺麗に顔面でキャッチした書類には、例の新メンバー候補者のデータが載っていた。
「名前はハニー・プルミル。黄の国でも有名な天才ハッカーよ」
「頭脳派なのですか!それは実に新メンバーに相応しい…“碧”に欲しい人材なのです!」
「ハニーはただのハッカーやないで。医学面にも長けたハイスペック女や」
「おお…!」
かなりのハイスペックさに、シアンは感嘆する。そんな人材が仲間になれば、隠密行動に動きやすさが増す。まだ名の知れていない“碧”にとっては、好都合だ。
「それなら早速彼女をスカウトしに行きましょうか。明日にでも出発するのです!」
「……またアンタはどうしていつも急なのよ」
「あいつ今行方不明や言うたやろ。どこ行く気や」
「取り敢えず、まずは黄の国なのです!」
「ならオレは留守番やな。3人とも頑張りや〜」
サルファーのテキトーな態度にソレイユは怪訝そうな目を向けるが、その発言の内容にはっとする。…3人?
「ちょ、ちょっと待てよ!僕も行くの!?」
「当たり前でしょアンタ新人なんだし」
「えええ…」
年も一番下で、こき使われるのではないかとソレイユは不安になる。おそらくこの中でいちばん常識人であろうサルファーがいないとなると…最早考えたくもない。
「て、ていうか…何でサルファーさんは行かねぇの?」
「彼を黄の国に行かせると国民を殺し兼ねないので」
「はァ!?」
「アイツ、黄の国に相当な恨み持ってんのよ。アンタもそうなんじゃないの?」
「ま、まあ…」
確かに、何の理由も無しに国を出て行くなんてあり得ない。それにしても、さっきの発言を笑顔で言うシアンには相変わらずゾッとする。
「あの国はゴミや。住む価値なんか無い」
「なら私の母国の赤の国だってカスよ。特にあの長が気に入らないわ」
「じゃあシアンの青の国なんかう●こなのです」
世界三大国をう●こ扱いするシアンたちにソレイユは少し共感した。勿論、悪い人ばかりではない。寧ろ自分達が“悪”だ。
ていうか、『じゃあ』って何だ『じゃあ』って。
「あ!でも昨日、赤の国の人で素敵な男の子に会ったのです!」
「何よそれ。イケメンってこと?」
「イケメンでもありますけど、何よりヒーローである事が素敵なのです!」
「は…?」
マゼンタは訳が分からないといった顔をしたが、ソレイユは記憶の隅にあった、1人の男を思い出した。
赤髪のアイツ。“紅の修羅”だと勘違いしたほど、真っ赤な髪の少年。
「シグナルくんって言うんのですよ〜!」
「シグナル…?そいつまさか、シグナル・レッドか…?」
「おや?サルファーご存知なのです?」
サルファーはその名を聞いて衝撃を受けた。マゼンタも知っているようで、目を見開いている。
「シグナル・レッドゆーたら、赤の国四天王にして世界No. 1の戦士やんけ!!」
「四天王…?」
途中で出てきた知らないワードにソレイユが首を傾げる。マゼンタはそんな彼に呆れた視線を送った。
「何よクソガキ。アンタそんな事も知らないの?」
「ぼ、僕ガキじゃねぇし!」
「なーんにも知らないみたいだから、教育係として言わせてもらうわ」
反抗するソレイユを無視して、マゼンタは説明し始めた。
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