碧落ラストコネクション


その時、


ビュンッ!!

「うわっ!?」

前方から小型のナイフが飛んできた。
ソレイユの右頬を掠めそうな速さで通り過ぎたそれに慌てて振り返って確かめると、シアンの心臓目掛けて飛んで来たのが分かった。

しかし狙われた本人は、先程のピースの手のまま人差し指と中指で軽々とナイフを挟んで止めていた。あのスピードにその対応で防げるシアンにも驚きだが、問題は誰が投げたのかということ。

ナイフの飛んで来た方へ目を向けると、明らかに投げ飛ばしたと言える構えをしているマゼンタがいた。


「ってオバサンかよ!!!」

「チッ」

「いやチッじゃねーだろ!?何してんだよ!!?」

「そこのアホ面を殺そうとしただけよ文句ある?」

「文句しかねーよ!!僕巻き込まれそうになったんだけど!?」

マゼンタはソレイユに目もくれず、シアンを睨みながら言う。対するシアンはやはりニコニコしていて、ある意味怖い。

「大丈夫ですよソレイユくん!シアンはこのくらいで死んだりしません」

「いやお前ら仲間じゃねぇの!?」

「やだなぁ〜ちょっとしたじゃれ合いですよ〜!」

「殺人行為が!?!?」

S級犯罪者のじゃれ合いは理解できない…と思ったソレイユだが、シアン曰く毎回自分を殺そうとしてくるのはマゼンタだけらしい。…何があったんだよ、オバサン。

かくいうソレイユもS級犯罪者である。



***


そうこうしているうちにオレンジタウンに辿り着いた。赤の国と黄の国を繋ぐこの町は、暖色系の建物が並ぶ明るい町だ。
3人はそんな町の中心にある大きな時計塔の下にいた。

「まずはマゼンタ、ソレイユくん。2人はこの町でハニー・プルミルについての情報収集をお願いします。1時間後、ここに合流しましょう」

「アンタはどうすんのよ」

「シアンはちょっとここの名物のオレンジビーンズを買ってから…」

「死ね」

まるでサヨナラの挨拶の如く言い放ち去っていくマゼンタに、ソレイユは呆れながらも慌ててついていった。

シアンは2人の背中を見送った後、お目当の店を探しに歩き出した。エメラルドストリートほどの観光客はいないが、大きな商店街を中心としたこの町は、沢山の人で賑わっている。

その中でも行列の並ぶ店に目がいく。行列を辿り近付いてみると、お目当のビーンズがあるケーキ屋があった。
ソフトクリームの時ほどではないものの、かなりの人数が並んでいる。並んでみようかとも考えだが、飽くまでも自分たちの目的は“新メンバーの勧誘”だ。

「(今回は我慢しましょうかね…)」

そう思い引き返そうとしたその時、誰かに腕を引かれた。

「!!」

よろけたシアンはその背を誰かに支えられた。驚いて振り返ると、視界には真っ赤な髪。


「……おや、2日ぶりですね!びっくりしたのです…まさかまたシグナルくんに会えるとは」

元気でしたか?と笑顔で挨拶するも、彼はシアンを見て黙ったままだった。
走って来たのか、息を整えている。一通り呼吸を落ち着かせてからも、シグナルはシアンの右腕を離そうとはしなかった。


「……シグナルくん?」

「えっ……あ、ああ、ごめん。まさかキミがここに来てるとは思わなくて」

「シグナルくんは今回も任務です?」

「いや、今日はプライベートでこの店に来てて…」

シグナルは後ろにあるケーキ屋に視線を向けながら答えた。どうやら彼はさっきまでこの店にいたらしい。
すると店内から見知らぬ女の子がシグナルの名を呼んで出てきた。

「シグナル!どうしたんですの突然……って、どなた?」

ローズピンクのサラサラストレートな長い髪の美女がシグナルの腕に絡みついてシアンを睨む。マゼンタ程ではないが、胸もかなり大きい。初対面でも分かるくらい、積極的な肉食系美少女だった。

「えっと…あ、ソラって言います。よろしくなのです!」

シアンが偽名を使った事にシグナルは驚いたが、赤の国は“紅の修羅”の本名の情報を掴んでいる。正体がバレるのはまずい。

「ふーん…ワタクシはチェリー・ローズ。赤の国四天王No.2ですわ」

「おや…四天王さんでしたか」

つまり、赤の国で2番目に強い戦士という事になる。赤の国ツートップは2人揃って美男美女なのかと驚いた。

「……アナタ、シグナルとどういう関係ですの?」

チェリーは嫉妬の目でシアンを睨むが、特に気にしていないのか、シアンは普段通りのまま答えた。

「ソフトクリームのお詫びをする・してもらうの関係なのです」

「…は?」

「……えっと、こないだ俺がこの子のソフトクリーム、ダメにしちゃって…あ、そうだ。あの時のお詫び、今しちゃっても大丈夫かな」

シグナルは後ろの店を指差して言う。お目当てのものが食べられるかもしれない、とシアンは目を輝かせた。

「いいのです!?大丈夫です大丈夫です!全然大丈夫なのです!!!」

チェリーは明らさまに嫌そうな顔をしたが、シグナルがどうしてもと言うのなら、としぶしぶ了承した。
店内に入り、シアンはシグナルの向かい席に座る。彼の隣に座ったチェリーに睨まれるが、効果はまるで無かった。


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