碧落ラストコネクション


夕日に染まる、オレンジの道を歩く影が2つ。

オレンジタウンでプライベートを過ごしたシグナルとチェリーは、赤の国へ帰ろうと足を進めていた。チェリーは一歩前を歩くシグナルの背中をそっと盗み見る。先程の件で、言いたい事が山ほどあった。

「……ねぇ、シグナル」

いつもと違うチェリーの声のトーンに、シグナルは思わず足を止める。振り返って見えた彼女のローズピンクの髪も、夕焼け色に染まっていた。

「どうかした?」

「……アナタ、自分の立場をちゃんと分かっているんですの?」

「……!!」

シグナルはその言葉の本質を分かっていた。
しかしまさか彼女の口から出るとは思っておらず、動揺してしまう。


「…あのソラって子、……“紅の修羅”ですわね?」


シグナルは大きく目を見開いた。まさか、あの後の話を聞かれていたんだろうか。

「あの子、アナタの暗殺ターゲットじゃないんですの?」

「………」

「殺さずに…しかも逃すなんて、長が知ったら何て言うか──、っ!?」

突然腕を引かれ、手で口を塞がれる。至近距離にあるシグナルの顔に、チェリーは頬を赤く染めた。

「……お願い、内緒にしてて」

「……!!」

寂しそうで、悲しそうなその瞳を見て、チェリーはおし黙る。暫くして離された手に、複雑な思いで尋ねた。

「アナタ…本当にそれでいいんですの?今ならまだ……」

言おうとして、シグナルの表情が辛そうなものである事に気付く。力無く微笑んだシグナルに、言葉を失った。

「……行こうか」

そう言って、また一歩前を歩く彼を盗み見る。

「……そんな顔されたら、何も言えなくなるじゃない……」

蚊の鳴くような声で小さく呟いた言葉は、風の中に消えた。
夕焼け空がオレンジタウンを濃く染め上げていく。シグナルは空を見上げ、彼女を思い浮かべた。


『キミは、キミの進みたい道を歩んでください』


四天王であるのに、敵を目の前で逃す。彼女の組織の存在も、アジトの場所だって分かっている。しかし、長に報告するものの中に、それらの情報は交えなかった。

立派な裏切りをするヒーロー。
黄の国の重罪人を“助ける”と言った悪役。

その矛盾に、自嘲の笑みを浮かべた。


「………キミは本当に、澄みきった空のような悪役だよ」




#03 オレンジビーンズ
──夕日が赤を嘲笑う。


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