碧落ラストコネクション


黒。一言で言うと、それが的確な言葉。

ただでさえ目が悪いのに、これだけ黒が続く空間にPCの明かり1つだけなんてどうかしてる。

外に出たい。
何度思ったことだろう。

けれど外に出ても私を待つのは“死”だけだ。
私がその領域に足を踏み入れるのを、彼……レモン・イエローは許さない。

もう一度、この目であの空を見てみたい。雨でもいい。雪が降っていても構わない。あの壮大な世界の下を歩きたい。
…そんな叶いもしない願望を補うように、ハニーは空の画像を見ていた。

すると突然、PCから“声”がした。


《マスター!マスター!》


“画面上”の空の画像の上を、泳ぐように現れた白黒の身体の少女。少女はPC画面の中から、機械染みた高い声でハニーを呼んだ。

「…どうかしたの?」

《大変なんデス!コレを見てくだサイ!!》

白黒の少女はどこからかフォルダを取り出し、マウスの矢印の如く自らの手でそれを開いた。

「……!?」

フォルダ内には、一本の動画が入っていた。黄の国で現在進行形で放送中の報道番組の一部で、その内容に驚く。

《「黄の国中心部でテロ発生!オレンジ色の煙の爆発から、犯人はおそらくS級犯罪者ソレイユ・オレンジと言われており、ただいま本部は四天王と戦士を…」》

ドンッ!!!

「!!」

画面から聞こえる爆発音を掻き消すように、外からより大きな爆音が聞こえた。どうやら今黄の国は大変なことになっているらしい。

《マスター、いつかここも狙われマス!レモンさんが今、こちらに向かっているはずデス!脱出の準備をしてくだサイ!!》

「…流石ね。私より世間について嗅ぎ回ってるだけある」

《何言ってるんデスカ!ワタシはアナタが…マスターが作った最新型ウイルスソフトなんデス!これくらい当たり前デス!!》

「…そうね、頼もしくて何よりよ」

この間髪入れず連続して起こる爆発に、オレンジ色の煙……間違いなくソレイユ・オレンジの仕業だろう。黄の国出身の最年少テロリストと呼ばれる彼は、一度黄の国を攻めた事があるが、それはもう4年前の話だ。何故、今になってまた彼が攻めてきたのか。
今、黄の国はどうなっているのか。

ドンッ!!!!!

「!!」

大きな爆発音、小さな揺れ。おそらくこの近くで、爆発が起きた。

《マスター…今の、かなり近いデスヨ…》

「…大丈夫。ここにはPCしかないもの。すぐ逃げられるわ」


扉さえ、開けば。


レモンさえ来れば、一緒に……いや、このチャンスを逃してはならない。彼と外に出てから、1人で逃げよう。それで誰にも見つからない所で、1人で死のう。
けれどそう上手くいくとは思えない。彼は呪術使い…能力を使われてしまえば全てが終わる。

どうする、どうすればいい?

もうこの現実から逃げることすら嫌になってしまった自分に、何が出来るか。
黒く塗りつぶされた“今”を、どうすれば塗り替えられる?

…考えても見つからない。

IQ200だなんて言われてきたけど、肝心の時に使えないんじゃ意味がない。120通り考えても、どれも失敗に終わる結末が予測される。いっそのこと、この部屋も爆発してしまえばいいのに。

四天王や長ではなく、同じ罪人に殺されるなら……そっちの方が私には似合っている。


ハニーは諦めたように目を閉じた。



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