碧落ラストコネクション


「皆さんに、お願いがあります」


ハニーが“碧”に加入して数週間が経った。
そんなある日、ハニーはソファの上に正座で座り、メンバー全員にそう伝えた。

「何やお願いて」

「実は…“碧”のメンバーに入れて欲しい人物がいまして…」

「おお、新メンバー候補なのですか!どんな子です?」

「この子です」

「えっ」

ハニーが見せたのはPC画面。…いや、その液晶内を動き回る、白黒の謎の生命体だった。
目をパチクリさせるシアン達に気付いた生命体は、こちらに近づいてきた。

《ドウモ〜!ハジメマシテ!モノ・トーンっていいマス!!》

肌から服まで全て白黒で、人間の女の子の姿をした生命体は、可愛らしい声で自己紹介する。画面上で本物の人間のように喋る彼女を見て、ソレイユは気味悪そうにハニーに尋ねた。

「な、何すかコイツ…」

その質問に、待ってましたとばかりにハニーは腰に手を当てドヤ顔で答えた。


「私特製の最新型ウイルスソフトです!!」


まるで人間が話すかのような自然な言いまわし、マウスカーソルの代わりに自由に動く行動ひとつひとつ、どれも機械とは思えない人間らしさがあった。

「凄いわね、コレ…本当に近付いたり遠退いたりしてるように見えるわ…しかもデザインも良い……」

「マ、マゼンタにそこを褒められると、なんか嬉しいな…」

照れて少し赤くなるハニーに、マゼンタもつられて恥ずかしくなった。シアンは笑顔でハニーに告げる。

「いいでしょう。この子を新メンバーに追加しましょう!」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「ちょっ、ええんか?サラッと決めて」

まだウイルスがどんな能力なのか、はっきりわかっていない。シアンはそれもそうだと思いハニーに尋ねた。

「ちなみに、このモノ・トーンの性能はどんなものなのです?」

「主に通常のウイルスと変わりませんが、侵入したPCの主の現実世界を、PC付属のWebカメラなんかを利用して記録出来ます」

「ごめんなさい。わかんないのです」

頭の悪いシアンには、そもそもウイルスがどのように侵入するかすら分かっていなかった。ソレイユも首を傾げている。そんな2人にマゼンタは溜息をつく。

「…例えば、私の使ってるPCにこの子が侵入したら、PCを動かしている私がどんな顔なのか分かるって事?」

「それだけじゃなくて、何をしているか、何を話しているかも分かるように作ってあるのよ。それから、AI搭載だから会話も出来る」

「す、すっげえ!!」

目を輝かせるソレイユに画面内でモノ・トーンは嬉しそうに照れていた。
付属のマイクやカメラをハッキングし勝手に起動させ、PCの主の世界を覗き込むことが可能。勿論、よくあるパスワードやアドレスなんかを記録する事も容易い。更にハニーお手製のAIにより、人間と同じように会話をする事も可能と言う。
ようやく理解したシアンもおお、と感嘆を上げる。

「そんなステキな能力をお持ちなら、寧ろこっちから入隊をお願いしたいのです!!よろしくなのです、モノちゃん!」

《こちらこそヨロシクデス、シアン様!》

その後も世間話を始める2人にサルファー達はモノのAIとしての性能の高さ、そしてシアンのコミュ力の高さを改めて実感した。

「…アイツら、仲良うなんの早いな」

「シアンって誰とでも仲良くなれそうだよな…オバさんとも仲良いし」

「仲良くなんかないわよ!」

最初こそは怯えていたソレイユも、今ではすっかり馴染んでいる。入隊したばかりのハニーともすぐに打ち解けたりとシアンの放つ雰囲気のせいか、彼女の周りには友人が多い。

「マゼンタとは正反対やな」

「…うっさいわね。馴れ合いなんて面倒なだけよ」

「ホンマかいな…」

プライドが高く態度もデカいマゼンタに友達なんていない。まともに話せる女子も、シアンだけだ。

「んだよオバサン、友達いねぇのかよ!ダッセ〜!!」

「何よ。アンタはいるの?」

「………さ、3人」

「少なっ!!」

目を逸らしながら小声で言うソレイユに、サルファーはすかさずツッコミを入れる。彼の場合、幼い頃からテロリストとして生きてきたのだから、少なくて当たり前だが。

「兄貴はなんつーか…友達いっぱいいそうなイメージ!」

「…せやなあ」

誤魔化すように言ったソレイユの言葉に、サルファーは窓の外を見ながら言った。

「いっぱい…おったなあ」

碧色の空を見つめるその横顔が、少し寂しそうに見えた。



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