碧落ラストコネクション


「でかした、モノちゃん!!」

《エッヘン!》

翌朝、ハニーが目を覚ますと、消した筈のPCの電源がついていた。驚いて確認すれば、モノ・トーンが新たな情報をゲットしていたのだ。
それをシアンに伝えれば、この状況だ。

「それにしても、ハニーに何も言わずに探しに行ったのですか?」

《ハイ!現実世界で戦えない分、少しデもお役に立とうと思いマシテ!》

「なるほど、では現実世界でも一緒に戦えるようにしましょうか!」

《エ?》

シアンの言葉に、ハニーとモノは首を傾げた。電脳世界で生きる彼女に、現実世界に出ろなんて無理な話だ。ハニーがそう伝えると、シアンは笑って答えた。

「いやいや、魔法でも無い限りそんな事は出来ませんよ〜!そういう意味じゃなくて、持ち運べる物に移動するのです!例えばコレとか!!」

シアンが取り出したのは、スマホだった。それを見てハニーは閃く。

「なるほど、どの機械にも侵入出来れば、相手のデータをクラッシュ出来る…流石ですシアン様!」

《そうと決まれば改良デスカ?マスター!》

「勿論よ!ちょっと今からやってきますね」

「えっ」

今からやると言っても、出発は今日の昼だ。短時間で改良なんて可能なのだろうか。

「1時間で改良してきます。今回のミッションでも役立つようにしますので、少々お待ちください!」

そう言って、ハニーは再び自室に篭り始めた。…天才の彼女なら、こんな事はその短時間で出来るのかもしれない。流石元情報部局長…侮れない。

するとその時、3階からソレイユが欠伸をしながらのそのそと降りて来た。

「おはよ〜シアン…いつも早いな」

「5時起床なのです」

「年寄りかよ!…あと、ハイこれ」

ソレイユは数枚の紙をシアンに渡した。
それは、昨日モノ・トーンが見せた大型爆弾のデータに、ソレイユの手書き文字が加えられたものだった。

「これは?」

「昨日の夜、ハニーさんやモノにお願いして印刷してもらったんだ。で、この爆弾の構造図に専門用語とか結構入ってたから、ぼくが解説書いといた。シアンでも読めるように!!」

「おおー!それはわざわざありがとうなのです!ところでこのCO2って何です?」

「そこから!?」

想像以上に低レベルなその脳みそに、ソレイユは呆れ果てた。
マゼンタやサルファーでも、流石に爆弾について自分より詳しくはないだろうと考えたソレイユは、その仕組み等の解説を分かりやすく伝えようとしたのだ。
汚い字で多少誤字もあるが、彼の頑張りが伝わってくる。


「ところでソレイユくん、キミはまだスマホのような連絡手段を持ってないみたいですが、必要無いのですか?」

「え?別に僕はどっちでも…」

「んじゃアメジストブリッジで買いましょうか。お金はありますか?」

「“碧”入る前に依頼受けてたから、その報酬が少しだけ…」

「なら大丈夫ですねえ」

“碧”メンバーは全員が犯罪者であるが故に、一般の世の中で働く事は出来ない。そのため、ソレイユのように裏社会での依頼をこなす等して金稼ぎをする者が殆どだ。

偽造身分証明書をいくつも持っており、変装術に長けたマゼンタは別だが。

「そういえば気になってたんだけど、この家誰が買ったんだ?3階建てでかなり広いし…」

「ここはシアンが買ったのです。最初は一人暮らしでしたからね」

「えっ!?こ、ここ1人で使ってたのかよ?」

「そうです」

元々仲間を集める気で、あえて何人も住める家を選んだのだろうか。それにしても、いくらしたんだろう。

「でも、今の生活費の殆どはマゼンタのお金なのです」

「えっ、オバサン働いてるの!?」

「一番稼いでますよ。怪盗として高価な物を盗んで売り捌いたり、暗殺の依頼受けてたり、変装して普通のバイトとかしてますね。キャバクラですが」

「………」

なんて天職なんだ。ソレイユは失礼ながらもそう思わざるを得なかった。

「キャバクラ界では有名だそうです」

「えっ…み、身バレとかは?」

「いいえ、確かベリーとかいう源氏名だったかと…」

げ、源氏…?…何?
キャバ嬢の名前事情はよくわからないが、ソレイユは自分たちで言う異名のようなものだろうと認識した。

「つか何で有名なんだよオバサン…」

「どんな男も心を掴んで離さない。ついたあだ名は魔性のブラック♡ベリー」

「………」

ソレイユはツッコむ事を諦めた。



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