碧落ラストコネクション


風を切る。


輪状に束ねられ、鎖のように繋がれた、血に染まった空色の髪が揺れる。木から木へ、屋根から屋根へ、紺色のケープの裾を風に翻し走る。

少女──シアンが辿り着いたのは、何の変哲もない一軒家。1つ特徴を上げるなら、3階建で、かなり豪華な大きい家である事。車一台入れるくらいの小さな庭もあった。

ポシェットから取り出した鍵を刺して扉を開ける。中に入れば、白い壁に茶色い木のフローリングが続く廊下がお出迎え。
廊下に続く扉越しに、中から「おかえりー」と声がした。

「ただいま〜なのです。ちょっと来てくれませんか?」

玄関でブーツを履いたままシアンがそう言う。すると、部屋の奥から桜色の髪にショッキングピンクのメッシュが入った、ゆるふわウェーブヘアの巨乳美女が出てきた。
彼女はシアンを見て目を見開く。


「ちょっ…アンタ何でそんな血だらけなの!?あとそのガキ誰よ!!」


シアンが片手で担いでいる子供──ソレイユを指差して言う。その反応にシアンは首を傾げる。


「ビンゴブックでも見たことあるじゃないですか。天才テロリストのソレイユ・オレンジくんなのです!!」

「なのです!!じゃないわよ!!何で担いでるわけ!?」

「誘拐しました」

「何してんのアンタ!!!」


サラッと言うシアンに女は叫ぶようにツッコむ。その大きな声が聞こえたのか、部屋の奥からもう1人、別の人物がやって来た。


「何やねんさっきからデッカイ声出して…近所迷惑に………って誰やそいつ!?」

「誘拐しました」

「何してんねんお前!!!!」


出てきたのは、高身長で金髪の特徴的な口調で話す、端正な顔立ちの青年。
シアンはソレイユを金髪の男に渡し、黒のロングブーツを脱ぐ。気絶したままのソレイユに、男は顔を歪めた。


「お前なぁ…こんなちっさいガキに何しとんねん…」

「気絶してくれた方が攫いやすいかなと思いまして。頭殴りました」

「容赦無いな!!」


男はソレイユを抱えて、塞がった両手の代わりに、微かに開いたままの扉を足で押し開ける。部屋の中に続く階段を登り、3階にある空き部屋へ運んだ。
まだ一度も使われていないその部屋のベッドに、そのまま寝かせる。


「取り敢えず目覚ますまではこのままにしとくわ」

「ありがとうなのです!」

「ていうかアンタ…エメラルドストリートに行ったんじゃなかったの?」


空き部屋までついて来た女がシアンに問う。男も気になっていたのか、シアンに目を向けた。
エメラルドストリートは、争いの少ない平和な街で有名だ。血だらけで帰ってくること自体、異常なのだ。


「行きましたよ!でも大変だったのです。ソフトクリームは残念な事になるし、ソレイユくんのせいでもう血だらけっ!!」

「取り敢えず風呂入ってこいや」


主語や目的語不足で訳のからない説明をするシアンに、男はピシャリと言う。しぶしぶ浴室へ向かったシアンを見て、2人はため息をついた。



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