I
放課後、もの凄い場面に遭遇してしまった。
「アンタ人の話聞いてた?付き合わないってば」
心底面倒くさそうな顔で男をフる学園1の美少女、小日向ゆかり。彼女の前には…
元モサ男、繋海遥果がいた。
……え、リベンジ?早くね?すごい根性してんな。
「たとえアンタがイケメンだったとしてもアンタを好きになる確率マイナス50%だから。じゃ、帰る」
「えっ、あ!ちょっ………はぁ」
小日向ゆかりは綺麗な長い茶色の髪を翻し、颯爽と去っていった。…ゼロどころかまさかのマイナスだった。他に好きな人でもいるんだろうか。
つまり、彼のイメチェンは特に意味が無かった事になる。いや、申し訳ない。
「イケメンだったらいけると思ったんだけどなあ…やっぱダメか…」
「まあでもリベンジするその心がけは素晴らしいと思うよ」
「根性あるのは俺の長所だからな!………ってうおっ!?」
彼の独り言に返事してやると、オーバーリアクションで驚かれた。
「あっ、お前!えっと…北篠!ま、また見てたのか…?」
「たまたま遭遇してしまっただけだよ」
彼の目は再び死んでいた。靴箱の前で告る方が悪い。もっと場所考えろ、場所。
「それよりイメチェンあんま意味無かったね、申し訳ない」
「え!?いやいや意味有りすぎだから!!俺モテ男になれたんだから!!マジありがとな!!」
常にニヤ顏の豊島と違って、コイツは表情がコロコロ変わる。非常に分かりやすい奴だ。
「ていうか俺、お前のことずっと探してたんだぞ?」
「…何故に」
「礼がしたかったからに決まってんだろ!同じクラスとか知らなかったし……まさかお前があの“北篠葵”とは…」
「え、何、私有名だったの?」
今日が初教室だったんだ。顔を知らないのは当然だろう。だが、“あの”…って何だ、気になる。
「俺さ、初等部の頃からお前と同じクラスだったんだよ。で、俺みたいな境遇のヤツらが皆言ったんだ…“不登校生、ホージョーアオイは幽霊”って」
「幽霊……」
なんて失礼な異名だ。人を勝手に殺すんじゃない。せめて成仏させなさい。
「で、思ったんだけど、この学園って学力でクラス決まるだろ?俺ずっといちばん上のSクラスだったんだけど…お前もってことは、やっぱ賢いの?」
「馬鹿じゃない程度に賢いよ」
「え、いや…それ多分全員そんなん…」
「…テスト受けたこと無いから分からないし」
「は!?テスト受けたことねえの!?」
繋海は驚いてばっかだ。そんなに珍しいのか、私。……珍しいか。
まあ、正確に言えば昔少しだけ受けてはいたけど、説明が面倒なのでスルーだ。
「じゃあ、次のテストは受けるのか?ていうか今後も授業は受けるのか?」
「不登校生じゃない程度に受けるよ。テストは受けないと思う」
「え〜受けろよ〜!そんで俺と勝負しようぜ!」
「学園1賢い繋海遥果に勝てるわけないでしょ。無理無理パス」
「パスしないでほしいな!!」
この私がそんな軽い挑発に乗るわけがない。
普通に考えて、普段から授業をまともに受けていない私と勝負しても学園1賢い繋海が勝つに決まってる。
「何だよ〜…逃げんの?」
「逃げるんじゃない、結果が見えているだけ」
「お前が勝ったら毎日玄米茶奢ってやる」
「よし、乗った」
あれ、おかしいな。今私何て言った?毎日玄米茶飲みたいって言った?言ったな!!
「おしっ、決まりだな!中間テスト、楽しみにしてるぞ〜!」
繋海はそう言い残して去っていった。
…どうやら私は単純らしい。
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