B
「おわぁああ!?」
「どう?見違えたでしょう」
場所を移し空き教室へ案内した後、色々準備してモサ男こと繋海遥果の長い前髪を切った。
ちょっとした都合で、私はいつも自前のヘアカット用のハサミを学校に置いているのだ。
これまた自前の鏡を彼に持たせる。
なんだ、全然イケメンじゃん。
前髪が素顔を隠していただけのオチだった。
「こ、これが俺…?てかお前、髪切るの上手いな!」
「慣れてるからね。あと驚くのはまだ早いよ」
天然パーマが残念な方向に行ってしまっていたから、イケてる天然パーマに整えてみる。
うん、ちょっと最近流行のイケメン俳優っぽくない?
「おおおおおお俺ってこんなイケメンだったのか…!!」
当の本人が自画自賛するほどの出来栄えらしい。
「あとは制服の着崩し方。それじゃただのだらしない人にしか見えないから」
「え!?最近のモテ男はネクタイ緩めたり第一ボタン外したり制服を着崩してるって雑誌に書いてあったぞ!?」
どんな本読んでんだコイツ。決してそんな事は無い。女子なんて皆基本顔で選ぶんだよ。…多分。
「明日はアイロンかけてね、ワイシャツ。…ネクタイヨレヨレなのも直したほうがいいよ。見た目きっちりしてたほうがかっこよく見える。多分みんなびっくりするんじゃない?」
「小日向も!?」
「そりゃモサ男がイケメンになってりゃびっくりするでしょう」
繋海は目を輝かせて鏡を見ていた。非常にわかりやすい。…ちょっと犬っぽいと思ったのは内緒だ。
「よっしゃ、明日から俺もモテモテだー!!」
「良かったね、私も楽しかったよ。はい、鍵閉めるから出て出て」
「あっ、悪いな時間取らせて」
「いいよ。私が好きでやったことだから」
教室から出て鍵を閉める。
左手の腕時計を見て、もうこんな時間かと今度は私が驚いた。
「うわ、ごめん8時過ぎてる」
「えっ!?ま、マジ!?やべえ俺急がねえと!!じゃあな!!イケメンにしてくれてありがとう!!お前は命の恩人だ!!!!」
またなーーー!!!と叫びながら彼は走り去って行った。近所迷惑だからやめてくれ。
…ガリ勉と思ってたけど、案外面白い奴らしい。
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