個性把握テスト

「個性把握テストォ!?」
「入学式は!?ガイダンスは!?」

それぞれがそれぞれの反応を見せる。

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出ている暇ないよ。雄英は“自由”な校風が売り文句、そしてそれは“先生側”もまた然り」

そして話は続く。

「中学の頃もやってるだろ。“個性”禁止の体力テスト………爆豪中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何をしてもいい。早よ」

そういって担任はツンツン頭の子にボールを渡す。
てかあの子、入試の時のヤバいやつ。同じクラスになってしまったのか。
なかなか強烈な印象だった為、あまり人を覚えようとしない私でもすぐわかった。

「んじゃまぁ……死ね!!!」
「死ね」

やっぱりインパクトがすごい。思いもよらぬ無意識に言葉に口に出して反復してしまった。
周りの子にも聞こえてしまったのだろうか、数名肩を震わせ笑いをこらえているようだ。
またもや失態。

「アァ!?んだ砂女!!!テメェまたオレをバカにすんのかァ!?!?」
ずんずんとすごい形相で近寄ってくる。めんどくさいやつに絡まれてしまった。というか地獄耳だな。
あっちも私のことを覚えていたのか。

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

そんな私たちを見かねて担任が言葉を発しながら計測器を見せてくる。
705.2m
今まで見たことのない数字に少し感動する。これがヤバいやつの実力…
ならば私はこれを超えなくてはならない。誰よりも強いヒーローになって父上と母上を守るのだ!!
数字を見て浮かれた私たちを担任は冷たい言葉で地獄へ突き落す。

「面白そう…か。ヒーローになるための3年間そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よしトータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう。生徒の如何は先生(俺たち)の“自由”ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

髪をかき上げてそう言い放った担任は敵さながらの悪どい顔をしていた。
この人…なかなかだ。でも…今まで会ってきた胡散臭い大人たちよりも多少は好感が持てる。だってこれ、この人の本心じゃん。ま、でもこの人大人だから嫌いだけどね。

そうして始まった個性把握テスト。
第一種目は50m走
本当のところは瞬身の術使いたいが、忍術なのであきらめる。きっと使ったら0秒か1秒台…悔しい。
でもダメなことを今考えていても仕方がないので、次の方法を考える。

(これなら・・・!)

「次、砂像」

スタートを切るとともにグランドの砂を利用し背中を押してもらう。ほぼ足のついてない状態だ。
「4秒48!‥‥砂像、俺の言った意味が分かってるのか?入試の速さはどうした」
「‥‥あれ、“個性”じゃないから。それ以上は企業秘密」

ほぼ、手を抜くと除籍にするぞと言われてしまったようなものだが、こちらだって“個性”を使って本気でやっているので多めに見てほしい。
というか入試の瞬身の術見られてしまったのか。ただポイント稼ぐだけじゃなかったのね。
これからもしまた何かしら忍術を見られてしまった時のための言い訳を少し考えるが、今はそんな時ではないことを思い出し、次の種目に向けて“個性”の使い方を考え始める。

第二種目は握力
握り潰すイメージで手を砂に変え、砂漠葬送を繰り出すと握力計が壊れた。
結果:測定不能=無限

第三種目は立ち幅跳び
50m走の時と同じように、今度は支える部分を下のほうにして体を浮かす。
限界を感じたところで降りると、178m

第四種目は反復横跳び
これは自力でやるしかないが、忍び時代似たような動きをすることが多かった。
130回なかなかだ。

第五種目はボール投げ
私を浮かしたときみたいに今度はボールを砂で浮かす。人間の重みよりボールのほうが軽い為、立ち幅跳びよりも記録が行きそうだ。
638.5m
‥‥あの『爆豪』に負けた。
ショックで棒立ちになっていると視線を感じバッと顔を上げる。
『爆豪』がニヤリと笑っていた。‥‥っちっくしょー!!私は!こんなところでこんなやつに負けるわけにはいかないのだ!!二回とも投げたが結果はあまり変わらず。

ボール投げの終盤で事件は起こった。
深緑の頭をした少年が担任によって“個性”を消されたらしい。
人覚えが悪い私でも彼は覚えている。入試前日に海岸で会ったナルトに似た目をした少年だ。そういえば彼も自信なさげだったけど雄英志望と言っていた。入学できたのか。
担任と話して下を向きながらボール投げの輪っかに戻る少年。
暗い顔をしているが大丈夫だろうか。その途中『爆豪』が除籍宣告だろと言い放った言葉になぜだか怒りを覚えたが、私が彼に突っかかる前に事は起きた。

この第五種目まであまりいい成績の残せていなかった深緑の少年がボールを投げたらすごい勢いで飛んでいき、705.3mという驚異的な数字を叩き出した。
それを見た担任は今日初めての笑顔を見せる。そしてなぜか深緑少年によく突っかかりに行く『爆豪』はやはり彼に怒鳴りに行った。
なんやかんやあったものの現場は落ち着き残りの種目を再開させる。

第六種目は上体起こし
1分間の間に何回できるかだが、個性使うことなく普通に行う。
65回…まあまあか。

第七種目は長座前屈
これも個性使うことができない為普通にやる。私は忍びの中でもなかなかに体が硬い。あまりいい結果は出せなかった。

第八種目は持久走
これまた得意分野。個性を使うことはできないが忍びの時はよく全速力で隣の国に行ってはその日のうちに帰ってきていたものだ。
結果、2位到着。1位の人はバイクで完走していた。いいのかあれ。

これにてすべての種目は終わり結果発表
私はトータルで言うと1位になれたらしい。
でもこれは完全なる1位じゃない。ボール投げでは『爆豪』に負けた。深緑少年にも。持久走も2位。長座前屈も反復横跳びもあいまいな結果だった。
私はすべての結果が1位になって、それをトータルした上での1位を狙っていたのだ。
悔しい…悔しい…

「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

そう言った担任はニヤリと本日2回目の笑みをこぼし、深緑少年に紙を渡すと校舎に帰っていった。やっぱり大人は嫌いだ。簡単にウソをつく。そう思ったけれど心の本当のところではそう思ってない私に少し戸惑いを感じた。


\Summer_Dive!/