友人
けっこう時間経ったように思えたが生徒はまだちらほらといる。
そこに見知った影を見つけた。
深緑の少年だ。向こうもこちらに気が付いたように手をあげて反応する。
「さっ砂像さん!!お、同じクラスになれたねっ…!僕の事覚えているかな?入試前日に海辺で会った…えっと、今から帰り?だよね、もしよかったら一緒にかっかっ帰りません、か??あの、ずっと話したかったけどなかなか話しかけるタイミングがなくてっその、嫌じゃなければ!!」
顔を真っ赤に染め上げながら早口でそう語る少年は、そういえば先ほどクラスメイトを拒否した時いなかった気がする。指に包帯が巻かれているのできっと保健室に行っていたのだろう。
少年とならなぜか話してもいいような気がした。…普通に話せるような気がした。
「いいよ」
二人して玄関に向かい靴を履き替え少し歩く。
「入試の前日…あの時砂像さんが大丈夫って言ってくれたおかげで僕…頑張れたんだ。本当にお礼を言っても言い切れないくらいで…きっとあの時砂像さんに会ってなかったら僕…「それ、君の力だから。私は何もしていない」」
少年の暗くなっていく言葉を遮り言い放つ。
「…うんっ!でも、ありがとう!!」
「指は治ったのかい!?」
どこからいたのか、ぬっと出てきた眼鏡の少年。
その眼鏡はいろいろと考察を聞いてもないのに一人しゃべり続ける。
するとまた一人遠くから近寄ってくる。
「おーい!そこの三人!駅まで?待ってー!」
「君は∞女子!」
「私は麗日お茶子!えっと飯田天哉君に砂像砂子ちゃん、緑谷…デク君!!だよね!!!」
「デク!!?」
「え?だってテストの時爆豪って人が…」
「あの本名は出久で‥‥デクはかっちゃんがバカにして…」
「蔑称か」
「えーーそうなんだごめん!!でも『デク』って…『頑張れ』って感じでなんか好きだ私」
「デクです」
「緑谷君!?」
急に騒がしくなった私の周りは、今までだと居心地が悪いと感じていたはずなのになぜか心地よくさえも思えてしまっていることに気づく。
「緑谷って名前なんだ。…ね、さっき教室であんなこと言ったけどやっぱり君たちと仲良くしたい。改めて砂像砂子。よろしく」
「あんなこと…?」
教室にいなかった緑谷は置いてけぼりにしてしまったが、麗日と飯田はすぐに反応してくれた。
「もちろんっ!!砂像さんってちょっぴりコワいイメージあったけど…そんな風に笑うんだね!これからよろしくね!砂子ちゃんって呼んでいーい?」
「教室でのあの発言は一時どうなることかと思ったが…考えを改め直してくれてよかった。せっかくクラスメイトになれたのだ。お互い最高のヒーローを目指して一緒に頑張ろうではないか。俺のことは好きに呼んでくれ。砂像君と呼ばせてもらう」
麗日の言葉で自分が笑っていたことに気づく。両親の前以外でこんな表情をしたのはいつぶりだろうか。多分この世界に生まれおちてからは初めてだ。
そして彼らは私の初めてのお友達。
麗日の砂子呼ばわりを了承し、門を出る。
この日が私のちょっとしたオリジンだ。
砂子が出ていった後の職員室にて
相澤とプレゼント・マイクは砂子のツンデレな可愛さに撃沈していた。
「なんだよあいつ…っ!ぜってー自分があんな表情してんの気づいてねぇーだろっ!!イレイザーわかるぜ!お前のかまいたいって気持ち!!ありゃあ猫だ…!なつく前の猫だ!!」
「…やめろマイク。俺はあいつを一生徒だとしてしか見ていない」
「What!?冗談はよせって、お前自分が今どんな顔してるかわかってんのかァ?」
マイクに指摘されなくても相澤は自分で気づいていた。
そして毎度撫でる度に気持ちよさそうに目を細める砂子。
普段はあんな生意気だからこそさらにそのギャップを際立出せる。
いつしかあの感覚に…あの表情が癖になってしまいそうだ。
「「((もっと撫でてェ…))」」
腐れ縁の同期はこんな時まで一緒だった。