入学前2

砂像 砂子
受験番号8112
個性「砂」

今日助けた(本人は助けたとか思うなと言っていたが)少女には見覚えがあった。
一か月ほど前の入試で筆記はそこまででもないが他の受験者とは比べ物にならないくらいの戦闘能力を見せつけた少女だ。
敵P56 レスキューP20
模擬試験中不運に巻き込まれ足止めをくらっていたようだが十分な成績だ。
しかし彼女にはいくつか疑問点が残る。
それは他の教師も同じことを口にしていた。

彼女の個性は「砂」であるはず。最初の出遅れた際に見せた超人並みの足の速さ。戦い慣れをしているとも見える無駄のない動き。不運に巻き込まれた際に足を怪我した少年に施した「治癒能力」。あれはただの応急処置ではない。何回もVTRを見返したが赤くなっている足に手をかざした途端徐々に赤みが消えていくのがはっきりわかる。
そして腐れ縁の同期が興奮していた0P敵を個性も使わず軽く体術で倒してしまう身体能力。その身体能力もすごいが彼女はいったい何を思って0Pを倒したのだろう。
始終無表情ではあったが絶対に雄英うちに入るという強い意志が見える目。
戦闘狂…そんな風には見えないがそう思えざるを得ない戦い方だった。

入学の準備もそれなりに落ち着き今日は久しぶりに家に帰る。
今日は15時と早めに仕事を切り上げ近くのスーパーで大量のゼリーを買い帰路につく。
すると帰り道の公園でたまに遊んでくれる白猫をみかけた。そして彼女。
猫と戯れている彼女は普通の少女に見える。何かを察した彼女は木に近づき上っていく。
ああ、猫か。
別に助けなくてもよかった。そんな身体能力を見ているから、彼女は自分でどうにかできるだろうとわかっていた。だが数日後担任と認識される前に彼女と話してみたかった。
滑り落ちた猫を“何か”で引き寄せ自分も滑り落ちる。
このタイミングだと邪な考えを悟られないように捕縛布で彼女をキャッチする。
VTRで見ていたが思ったよりもずっと小柄なことに驚きつつ、次の行動に目を見張った。
いつの間にか捕縛布から抜け出していたのだ。
何らかの個性で抜け出したなら100歩譲ってまだわかる。しかし彼女はそんな素振りも見せずに例えて言うならば布団から抜け出すように捕縛布から抜け出した。
プロヒーローが…しかも何年もかけて習得したこの技を抜けられてしまうとは…
とてつもないショックに一瞬打ちひしがれるが、彼女の発した思いもよらないなかなかな生意気な言葉に現実に引き戻される。
猫がシャーと威嚇する姿と重なって見え礼儀知らずで生意気ではあるが可愛らしく見えてしまう。この年頃の思春期というやつか。
一言声をかけてなだめるように頭をなでると、きっと彼女は自分では気づいていないのだろう。目を細めて気持ちよさそうにする猫みたいな表情に少しニヤケてしまいそうになるのをこらえ背を向ける。
後ろから「触るな!!!」とまた強くシャーと威嚇されたがあんな表情をされて怖いとか罪悪感とか一切なく、あと三日後にせまる初登校日に少し胸を躍らせた。

だけどまぁ、『大人が私に触るな』か。また何か少しこじらせてそうな‥‥

(めんどくさいことになったな…)

そう心では思うが柔らかい表情をしていたなんてことは本人も、誰も知る由もない事実である。





\Summer_Dive!/