ラムネ
夏の青空を思い起こす瓶を見かけた。
衝動的に、二本買った。よく冷えていて、瓶を持っている手のひらだけが違う季節を生きているようだった。
いいものあげる。そう言ってエースに差し出せば、パッと明るい笑顔を見せて受け取った。
それもまた、夏の匂いがした。焼けつくような日差しが似合う笑顔。まだ遠いその季節が、急に待ち遠しくなった。
瓶の蓋を押し込む。これは飲み口にガラス玉がはまっている。飲むためにはガラス玉を押さなければならないけれど、そうすると中身があふれ出すことがよくある。だけど、それも風情というもの。手がベタベタするのは後で気にすればいい。
わたしの瓶は彼が開けてくれた。中身はあふれなかった。受け取って一口飲めば、しゅわ、と炭酸が喉の奥ではじけた。
瓶を傾けると、飲み口のすぐ下、くびれたその場所にあるガラス玉が、細やかな泡の海を泳いでいる。
見ているだけで、気分はすっかり夏だった。
「似てんな」
エースは唐突に言う。わたしはゆっくり泡を飲み込んで答える。
「なにが?」
「この瓶の色と、ナマエの目の色」
彼は持っていた瓶をわたしの顔の横に掲げてみせた。日差しに当たって、青色がキラキラと輝く。
珍しい色をしていると、よく言われることがある。
子供の頃は明るい色をしていても、成長するにつれて変わってしまうことが多い瞳の色。
けれど、わたしはいつまでも明るい色をしていた。
「アメみたいでキレイだ」
「そう?」
「食っちまいてェな」
「そうしたらエースのこと、見れなくなるよ」
そう言うと、彼が今度は短く笑い声をあげる。
「じゃあ、やめとく。おれだけ見るんじゃつまんねェからな」
透き通る、爽やかな声が耳をつたって流れ込んできて、胸の中で弾ける。
火照るその場所を冷やすために、わたしはまた甘い泡を飲み込んだ。