だんだん眠くなる
「さわらないで」
拒絶されて傷つかない奴なんていない。
突然のことで理解ができなくて、「え、」と間抜けな声しか出せなかった。
「なんで、」
「いやなの」
「なんで嫌なんだよ」
必死に思い巡らす。いまこの瞬間までに、ナマエにしたこと。
何か間違っていた?知らない間に傷つけたか?この間こいつがとっておいたおやつを黙って食べたから?でもそれは謝って、許してもらえたよな?もしかしたら許してもらえてなかった?それともまた別の……。
だめだ、思い出せねェ。脳みそをフル回転させても、何も出てこない。
そうしている間に、こいつが離れていってしまうのが嫌だったから、繋ぎ止めようと手を伸ばす前に、声でさえぎられた。
「わたし、眠いの」
しきりに目を擦りながら言う。
「エースの手はあったかいでしょ?だからこのまま寝ちゃいそうでいやだから、さわらないで」
おれはさっきと同じように、また「え、」と間抜けな声を出した。
「な……なん、……お前なァ……」
言いようのない感情が胸の中で渦を巻く。むずむずする。落ち着かなくて、今すぐ走り出したくなってきた。
「紛らわしい言い方すんなよな」
「なにが?」
首をかしげるナマエの目は、まぶたがほとんど降りてきていた。
まだ身体の中心が熱い。冷める気配はない。というか、ナマエがとんでもないことを言うから、どんどん熱が上がっている感覚さえする。
ふといいことを思いついて、腕を伸ばして抱きしめた。
細い肩。薄い身体。「いやだ、やめて」と弱い力で抵抗するのを落ち着かせるように背中をなでれば、そのたびにおれに寄りかかってくる。
「寝ちまえよ」
「やだ」
「寝てても一緒にいてやるから」
「んん……それじゃだめなの……」
「なんでだめなんだよ、いいじゃねェか」
余計な心配させやがって、と内心悪態をつく。きっと少しくらい許されるはず。
いま、こうして抱きしめているのだって、妙に緊張して落ち着かねェんだから。
「えーすとはなすの、すきだから、おきていたいの……」
今度は声すら出なかった。
息を飲んで、吐き出すのをしばらく忘れていた。
明らかに体温が上がった。心臓が忙しなく暴れ回る。
頭を抱えたかったけど、当の本人はかすれた声でそんなことを言ったきり、本格的に眠りに落ちていってしまったようで。
おれは一人、取り残される羽目になったのだった。