起こす話



ソファーの背もたれに頭をあずけて、長い足を放り出して、気持ちよさそうに眠る彼を見つけた。
わたしは足音をひそめて近づいて、隣の空いた場所に座った。
とてもよく眠っていて、膝をくっつけても、しっかりした腕にわたしの腕を絡めても、起きる気配はなかった。
ゆるい癖のある前髪、真っ直ぐ伸びているまつ毛、通った鼻筋、頬に散ったそばかす。
形のいい唇に、歪みのない顎のラインにまで視線を送っても、無防備に寝息を立て続けている。
それがなんだかおもしろくなくて、さらされた喉元ににキスをした。
わざと大きく音を立てて離したのに、脈打つ首筋はそのままだし、喉仏も震えない。
なんだ、つまんないの。腹いせに、今度は唇にキスをする。
「あ、」
視線の先、真っ直ぐ生えたまつ毛が震えた瞬間を見逃さなかった。
わずかな達成感が胸の中に生まれる。実は、彼を起こすのは至難の業だった。
ねぇ起きてよ、揺り動かす。それでもまだ目と閉じたままで、起きる素振りを見せないから、続けて頬や唇のキスをした。
「起きて」
耳元でそう囁いてから、何度目かのキスを頬に。
「起きてくれたらもっとキスしてあげる」
わたしの言ったことに応えるように、ゆっくりとまぶたが開かれて、顔が動いて、視線が合う。
「…………フツーに起こせよ」
寝起きの最悪な目つき。眉間にはしわが寄っている。それでもどこかぼーっとした表情が愛おしくて、ただ微笑んだ。

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