愛してるゲーム



「愛してる」
ちょうど小さなプラスチックのスプーンで、レモンミルク味のジェラートをすくい上げた瞬間だった。
軽く頭を引き寄せられて、おでこにエースの胸板がぴったりとくっついて、頭の上から声が降ってきた。
滅多に聞かない情熱的な言葉に驚きつつも、スプーンを口に運んだ。ふんわりと溶けていく甘酸っぱさに舌鼓をうちながら訊く。
「なあに、急に」
「愛してるゲーム」
「愛してるゲーム?」
これまた珍しいことを言ってる、だなんて思いながら喉を下りていくレモンミルク。
「それって、お互い愛してるって言い合って、照れたら負けのゲームじゃなかったっけ?」
「知らねェ」
「知らないの?そう……エースも食べる?」
訊けば、エースは首を横に振る。
「今はいい」
「そっか」
エースはそのままわたしの頭に顎を乗せてじっとしていた。離れる素振りもなくしっかりと抱きしめられたままだから、仕方なくその窮屈な場所で甘くほどけるジェラートを食べ進める。
彼がわたしにゲームをしかけた理由は、きっと照れるところが見たかったからだろうけど。
たぶん、今は彼のほうがとても照れている。しきりにわたしの頭を撫でているし、抱きしめてくる腕にも力が入っているし。
「エース」
「……なんだよ」
「耳、真っ赤」
「うるせェ」
ちょっとぶっきらぼうに言ってくるところなんかまさにそう。エースは結構恥ずかしがりな部分があるから、こういうゲームは不向きだと思う。それでも試してくるところに、不器用な愛らしさを感じる。
「ねぇ」
くっついていた彼の胸を押して、少し離れてから正面に向き合う。紙のカップに入っていたジェラートはもう空になった。
「愛してるよ」
微笑みかけるように言うと、エースの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「お前っ、それは反則だろ……!」
「先に言ったのはエースじゃない」
「ぐッ、」
「ふふ、かわいい」
「かわいくねェ!」
「わたしの勝ちだね」
言い慣れていないことを口にするのは勇気がいるけど、今日のわたしは冷たいものを食べたから胸が熱くなることはないし、甘いものに舌がなじんでいるから照れずに言える。
ずりィ、とエースは悔しがっている。
さっきのジェラート、食べておけば勝てたよ、きっと。

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