0815
相互さんの誕生日に捧げた話朝、目を覚ますと枕元に白い花束が置いてあった。
ベッドから起き上がって、キッチンに立つ彼とおはようの挨拶をしたときは、テーブルに置かれた花瓶の中で黄色の花が咲いていた。
「どうしたの?これ」
彼の作ったおいしい朝ごはんを食べて、歯を磨いたあとに身支度をしていると、首元にほんの少しひんやりとした感覚がした。見れば、鏡の中のわたしは、いつの間にか小さく光るネックレスをしていた。
「買ってきたんだよ、君へのプレゼント」
わたしの後ろに立って、ネックレスの金具を留める彼と、鏡の中で目が合う。いつもやさしいサンジくんだけど、今日はとびきり甘い笑顔を見せてくれている。それはうれしく思うと同時に、ちょっと照れくさかった。気づけば自分でもわかるくらいに頬が赤くなっていて、チークをのせすぎたみたいになっていた。それがまたはずかしくて、肩を丸めて視線を外すと、細いシルバーのチェーンから花びらをかたどった飾りが下がっていることに気づいた。
「今日はお花がいっぱいね」
首元で揺れるそれを指先で撫でると、鏡越しに見える彼は満足そうにほほえんで、耳の後ろにひとつキスを落としていった。
「似合ってるよ」
「ありがとう」
「本当は花なんかかすむくらい君のほうがきれいだけど」
「あら、お上手」
軽口を叩きながらふり返ると、今度はこめかみと頬に唇が触れる。
「本当だって。君はかわいいし、きれいだし、それに」
そこで言葉を切って、彼はまたふわりとやさしくほほえんで。
「愛してる」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にきゅっと締めつけられるような感覚が生まれた。それと同時に顔中に熱が集まって、燃えるような熱さを覚えた。きっと、いまのわたしの顔は、バラの花びらにも負けないほど真っ赤になっているだろうと思ったけれど、隠す間もなく後ろからぎゅうっと抱きしめられてしまった。
「おれのプリンセスは本当にかわいいね」
「もう……」
「なァ、こっち向いて?」
言われるままに顔を上げて、向き合う。それから、どちらからともなく、引力にしたがうような動作で自然と唇が重なった。
「今日はなんだか特別な気分」
彼の唇の下で声をひそめながら言うと、彼も同じように静かに喉の奥で笑った。
「どうしてだと思う?」
「んー……わからない」
「わからない?本当に?」
「ふふ、うん、本当に」
「誕生日だよ」
「誕生日?」
「そう、君の」
「あれ?そうだっけ」
まるで忘れていたというように、わざとらしく驚いてみせる。すると、彼は小さく笑ってもう一度、触れるだけのキスをした。
「お祝いさせてくれないかな、君のこと」
すぐにでも鼻先が触れるほどの距離で、とびきり甘い声と眼差しを受け取ったものだから、身体の中に降り積もった彼の愛情があふれてしまいそうだった。わたしはただ、うん、と短い返事をしてうなずくことで精一杯だった。