風鈴の音



どこからか、チリン、と涼しげな音が聞こえてきた。
カーテンのすき間から、真っ青な空と白くてもこもこした雲が見える。窓を閉めていても、じりじりとアスファルトを焼きつける日差しの強さが見てとれた。
エアコンのきいた部屋の中は、それなりに快適だった。なぜそれなりなのかというと、ベッドの上、隣に寝転がるエースがわたしに抱きついているから。
しっかりした腕はベルトのようにお腹を押さえているし、長い足はわたしの足に器用に巻きついていた。身動きがとれないわたしは、肌が触れている部分に、こっそり汗をかいていた。もちろんそれは窓越しに伝わる外気の暑さと、くっついているエースの体温のせいでもあるけど、彼とじゃれ合った名残でもあった。
「あー……」
思わずため息をつくと、それに気付いたのか、エースが小さく笑った。吐息がくすぐったくて身をよじると、逃さないというようにぎゅっと抱きしめられる。
「なんだよ、変な声出して」
「あついんだもん」
「さっきは寒ィって言ってたじゃねェか」
「いまはあついの」
文句を言いながら足をばたつかせると、さらに強く拘束される。
昨日の夜、一緒に映画を観ていて、ふと会話が途切れたときがあった。そのときなんとなく目が合って、そのままキスをした。一度触れるだけのキスをして、もう一度唇を重ねたとき、エースの腕が腰に回って引き寄せられた。
それから先は、まぁ、わたしたちの間ではよくあるやり取りだった。お互いに、何気ない瞬間に、盛り上がってしまったりする。いつも通り。身を寄せ合っておしゃべりするのと同じように、何度も身体を重ねて、くたくたになって、日が昇ってからも眠っていた。
そうしていまにいたるわけだけど、どうにも暑かった。明け方に一度、目を覚ましたときは肌寒くて、エースにくっついてしまったほどだったけど、もう人肌なんていらないくらい。
「……暑ィなら、離れりゃいいじゃねェか」
耳元でささやかれて、それもそうだと胸の中で思う。首筋に触れるエースの髪の毛がくすぐったいし、お腹にまわる腕は重たいし。
「だって……離してくれないし」
言い訳するように言うと、少しの間沈黙があって、「嫌なのか?」とくぐもった声で訊かれた。その言い方はずるいなと思いつつ、小さく首を振る。するとまた笑い声が聞こえて、わたしもつられて笑った。
「わがままな奴」
「それはどっちかっていうとエースの方じゃない?」
「んなこたァねェよ」
そんなことあると思うけどなぁと思っているうちに、あくびが出た。うとうとしていると、エースの声が聞こえてくる。
「まだ時間あんだから寝てろよ」
「うん……」
ぼんやりとした頭のまま返事をして目を閉じると、額のやわらかなものを感じた。ちゅっ、とかわいらしい音を立てて離れたそれが、今度は頬に押しつけられる。
エースってキスするの好きだよね。そんなことを思っているうちにだんだん意識が遠のいて、また窓の向こうから、チリンと音がした。

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