手をつなぐ話



その指の細さに、思わず息を飲んだ。
傷一つないなめらかな指先は、桜色の薄い爪が乗っていてほのかに冷たく感じた。
きっと自分の体温が高いから温度差を感じるのだとエースは思ったが、ナマエの日に焼けていない肌の白さが余計に錯覚させているようでしかたなかった。
こんなに頼りない手で、本当に生きていけるのだろうか。うっかり傷をつけてしまわないように、やわらかく手を包み込みながら思う。
力加減を間違ってしまえば簡単に折れてしまいそうだ。そういえば、女の肌の美しさを陶器に例えたりもするのだったか。どこかで聞いた口説き文句を思い出した。酒場の酔っ払いの戯言かなにかで、キザな言い回しに辟易した覚えがあった気がする。自分だったらそんな回りくどい言い方はしないと思っていたのに。
「……怖ェ」
「なにが?」
「傷つけそうで、怖ェ」
まるで繊細なガラス細工にでも触れているような。決して傷をつけてはいけない宝物の管理を任されたような重圧が、手のひらを伝って全身にのしかかる。
ビビっている。情けないことに。その証拠に飛び出した声は弱々しかった。ナマエの手は、エースの手のひらの中では子供のように小さくも感じた。厚みもなく、ただ薄い。
「大丈夫、そんなに心配しないで」
不自然に緊張するエースをよそに、ナマエは繋いだ手に力を込めた。おそらく、さっきよりも強く繋がれているからそうなのだろう。けれど、それだって簡単に振り払えるほどに弱々しくて、エースはますます肩を張った。
「いや、無理だ。絶対傷つける」
「ねぇ、大丈夫だって」
「い、いや、無理だって……」
「もう、エースったら不器用ねぇ」
しょうがない子とでも言い出すようにナマエは笑い、それまでよりもより強く、エースの熱いくらいに温かな手を握った。
「ほら、平気」
「、あぁ……」
「なんともない」
「うん」
「エースの手はあったかいね」
「あー……お前はなんで、そんなに冷てェんだ?」
「冷たい?」
「まァ、おれより」
「じゃあ、離そうか」
「いやだ」
それまで散々戸惑っていたのに、否定の返事は迷うことなく言う様子がおかしくて、肩を揺らしながらナマエは大きく笑った。
「わかった、それならずっと離さないでね」
「おう」

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