美貌の人



まるで絵画から抜け出してきたような完璧な美しさだと、クルーの一人が言っていた。それを聞いた瞬間、周りにいた他のクルー達が、お前は絵のことなんか知りもしないだろと笑っていた。
どうやらナマエは、周りから見るととびきりの美女らしい。
確かに顔は整っている。骨格に歪みはないし、鼻筋も通っていて横顔のバランスもよかった。歯並びだって悪くない。頬骨も丸くて何度だって撫でたくなるし、キスをするとき下顎の関節から顎先の骨をなぞるとなんとも言えない多幸感が込み上げてくる。
「確かにお前はかわいいけどな、具体的に何がと聞かれたら答えるのに苦労する」
おれの手にはちょうどいい大きさの頭蓋骨を守る髪に指を通す。何が美しくて、何が醜いかだなんて、そんなものはわからない。
「わからないが、お前はかわいい」
「それって褒めてるんだよね?」
「当たり前だ」
「なんか複雑」
「何でだ、喜べ。おまえは足の形も爪の生え方も可愛いし、内臓だって綺麗だ」
「あぁ……そうなの?」
「心臓の形も綺麗だし、小さくてかわいい」
「やっぱりよくわからないなぁ」
呆れたとばかりに首を振って、それでも唇は弧を描いて淡く微笑んでいた。ローの感性は独特すぎて、だとか続けて言っていたが、そんなのは知ったことじゃない。
「おれはおれの思うように、お前を愛してるだけだよ」
そうすると今度はひどく驚いた表情をして、それから頬を赤くして「それは、ありがとう」と律儀に言ってくる。
そうだ。しいて言えば、こういうところが美しいのだと思う。

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