二宮さんが隊を結成したらしい、という話を凩さんから聞いた。ほーそうなんですかと感動の薄い返事を返せば何故だか苦笑を返される。だって前々からその話はあったしあー漸くかーくらいで特に感想もない。二宮さんに特に興味があるのかと聞かれたらそうでもないし。その旨を伝えれば、凩さんはまた苦笑して「やっぱりドライモンスターだなあ」と肩を竦めた。えいや何でだおい。
「………まあそれはいいんですけど」
「え、良いんだ!?」
「もう否定するのも疲れました。…というか結局二宮さんは誰を選んだんですか?」
「ん? えーと………誰だったかな、確か橘と仲の良い………犬?なんとかって子はいたの覚えてるんだけど」
「……犬? 犬…………ああ犬飼か。別に仲良くないですよ。……ふーん、犬飼か…」
「いやどうでもいいけどお前ひどいな…」
「え?」
「え? じゃなくて」
凩さんの呆れた顔に首を傾げながら、明日犬飼に話を振ってみるかと頭を巡らせた。
▽
「ん? 二宮隊のメンバー?」
翌日、予定通り犬飼にその話を振ってみると犬飼はまず質問に答えず首を傾げてきた。何で知ってるのかと。うちの隊長が二宮さんと仲が良いのだと告げると何だか少しだけ嬉しそうな顔をしていたが何なのだろう。まあそれはどうでも良くて、改めて誰がいるのか聞いてみると犬飼はそうそう聞いてよと名前を一人ずつ挙げだした。
「一個下が二人いて、戦闘員で攻撃手の辻ちゃん、オペレーターの氷見ちゃん。んであとおれね」
「ふーん、そんだけ?」
「いや、もう一人いる。狙撃手なんだけど……それが聞いて驚け、同じクラスの鳩原未来だったんだよ!」
「………ほー、ハトハラ?」
思っていたよりも私の反応が薄かったのか、犬飼はガクッと転けて、驚いた顔をした。
「も、もしかして穂村さ、クラスの奴の名前覚えてない?」
「いえーす」
「いえーすじゃねえよ! 覚えろよそんくらい!」
いやだって名前覚えるの苦手だし…と覚える気ゼロな私に溜息を吐き出して、犬飼はクラスのある場所を指差した。そちらを見ると、少々地味目の女子が机に向かって課題をしていた。
「ん?」
「あれ、鳩原未来! 二宮隊の狙撃手!」
「………ふーん」
少しだけ意外なそれに小さく返答して、その女子……鳩原さん?を暫く見つめた。しかしメンバーを全員知って興味を失ってしまった私は視線を前に戻し、次の授業の準備を始めた。犬飼には文句を言われたけど無視だ。
「(鳩原さん、か)」
▽
「…………あ」
「、えっ?」
それから数日が経って、狙撃手の合同訓練にて鳩原さんが隣のブースに入ってきた。私が小さく声を上げると、鳩原さんはそれに大袈裟に反応して、私を見た。
「あ………えっと、橘、さん」
「ドーモ。私のこと知ってるんだ」
「い、犬飼くんに、なんかこの間からちょっとくらい橘さんを見習ったほうがいいってよく言われるから」
「ふうん」
そういえば、と、その言葉を聞いて、この間あの後犬飼から聞かされた話を思い出した。
鳩原未来は、人を撃てない。
それが本当なのだとしたら、それは本当に私とは真逆の子ということだ、鳩原さんは。
「……まあ、別にいいんじゃないの? 私のこと見習わなくても」
「、え?」
鳩原さんはキョトンとした顔で私を見た。私は言ってからガラじゃねえしまったと思いながらも、ここまで言ったら言うしかないので口を開く。
「だって私は二宮さんに誘われてないし」
「、!」
「鳩原さんにしか出来ないことがあるから二宮さんだって鳩原さんを選んだんでしょ? だったら別に見習わなくたって良いと思うよ」
小っ恥ずかしい台詞を全て言い終えて、私はすぐに前を向き狙撃の練習を始める。前を向く直前、後ろのほうで当真が驚く気配がして、思わず顔を歪めた。くっそ。聞かれた。ガラじゃないのに。
「………ありがとう」
隣で小さく鳩原さんの言葉が聞こえたけど、聞こえなかったふりをした。
ガラじゃない