鳩原さんはどうやら武器を狙って撃つ戦術を実践しているらしかった。武器を狙うという独特な戦術、そしてそれを実行できる精巧な技術は犬飼も認めざるを得ないようで、次第に人を撃てないことへの文句はなくなっていった。
「いやあ、武器を狙うとか変態だよね」
「真っ先に急所を狙うドライモンスターには言われたくねえな」
「だって早くカタがついたほうがいいかと」
「だからドライモンスターなんだよ」
「うるせえしね」
あの鳩原さんとの対面から数日経った訓練後、私と当真はラウンジへと向かうべく並んで歩いていた。いつものように暴言を吐きつつ会話を交えていると、すれ違うC級隊員たちにドン引いた目で見られた。解せぬ。
「まーでもそんなドライモンスターにも人の心はあったわけだ」
「…うっさいなあ何回言うんだよそれ」
鳩原さんとの対面の際、私の言った慰めのような言葉を聞いていた当真は、ずっとこれについてからかってくる。曰く、先程のようにドライモンスターにも心はあるのか≠ニ。なんなんだよ別に私ドライじゃないし普通だし。道徳やり直せとか言われるけど別に道徳心がないわけじゃないからね。電車やバスで立ってるお年寄りがいたら率先して代わってあげるよ? 平気な顔して座ってたりしないよ? ほら道徳心あるでしょ?
「まーでも鳩原も喜んでたし」
「ほーそりゃ良かった良かった」
どうやら当真曰く、鳩原さんは先日の私の言葉で二宮さんに言われた武器破壊≠実行しようと心に決めたらしい。元々技術はずば抜けていたようだし、私の言葉がなくたってその内なんとかしていたとは思うが、それで鳩原さんが喜んでいたなら何よりである。
「というか本当にどういう風の吹き回しだったんだよ?」
「だから何でもないってば」
「いやいや、あのドライモンスターだぜ?」
「……あのなあ…」
あまりにしつこく失礼な追求に顔を歪め呆れた顔を作る。よくもまあそんな失礼な台詞がポンポンと出てくるものだ。
「………凩さんが」
「あ?」
「凩さんが、二宮さんのこと凄いって言ってて」
「…? おいおいすげえ話の逸らし方…」
「その二宮さんが誘った鳩原さんだから、多分凄い人なんだろうなって思って。勿体ないなと思っただけ」
それだけ言って、黙りこむ。…ふむ、やっぱりなんか、ガラじゃない。
▽
「あ、あの………橘さん」
「ん?」
暫くして、教室にて、鳩原さんの方から話しかけてきた。私に一方的に話しかけてきていた犬飼は視線を鳩原さんに向け、パッと持ち前の笑顔を見せた。
「やっほー鳩ちゃんオハヨー」
「、あ、うん。おはよう犬飼くん」
「お前のその態度の変わりよう嫌い」
「えっ、急に悪口!!」
「悪口じゃなくて意思表明」
「これだからドライモンスターは!!」
わあんと泣き出してしまった犬飼を放置して私は鳩原さんに向きあった。何か用、と首を傾げて見上げると、何故だかたじろぐ鳩原さん。何故だ。怪訝そうな顔をしていると、さっきまで泣いていた(はずの)犬飼がぱっと回復して、「そりゃ穂村に見上げられたら怖いでしょ」とまた失礼なことを抜かす。にゃろうそんなすぐ復活するんならもっと泣かしてやろうか犬っころめ。
「あ、いやそうじゃなくて」
「ああいやいいよ別に。んでなに?」
「あ、あのね」
用事の内容は今日の狙撃手の合同訓練についてだった。どうやら内容が変更になったらしい。
「ああ、了解。ありがとね」
「あ、いや、うん。じゃあ…」
「鳩原さん」
「はいっ!?」
「今日放課後一緒に本部行こう」
「……え…!?」
「多分余計なのも一緒だけど…………ああ、まあ嫌だったらいいよ」
「余計なのって何!?」
「犬飼うるさい」
急な私の誘いに戸惑っていた鳩原さんだが、すぐに嬉しそうに首を縦に振ってくれる。まあ嫌じゃないならよかった。
自分の席に戻っていく鳩原さんを見送って、犬飼が怪訝そうな顔をして首を傾げた。
「………なんか鳩ちゃんに甘くない?」
「さーね」
私だって、自分と真逆の子が気になったりするのですよ。
私と真逆の子