「鳩原遅い」
「これでも急いだんだよ…」
残っていたらしい課題を全て提出し終え、息を切らしながら私の元へやってきた鳩原に遅いと呟けば、不満そうな声が返ってくる。課題系はさっさと終わらせてしまう私は鳩原のこのギリギリまでやらない感覚はちょっとよく分からない。後で慌てるくらいならさっさとやっとけばいいのに。
あれから珍しく私から距離を詰めていき、私と鳩原はよく一緒にいる仲になった。教室で鳩原と話していると犬飼が不貞腐れて絡んでくるのが面倒だが、鳩原と一緒にいるのはそれなりに楽しかった。鳩原は結構自分のことにはズボラで、あんな精密な射撃をするとは思えないほど不器用だ。髪はボサボサで、自分に自身がなくて、背中はいっつも丸まっているけど、鳩原と一緒にいるのは楽で、私は鳩原のことを気に入っていた。
「そういえば今日は犬飼くんいないの?」
「さあ」
「さあって…………もうちょっと興味持ってあげればいいのに」
「なんで?」
「いやなんでって……」
困った顔の鳩原に、更に首を傾げる。どうして犬飼の行動にいちいち興味を持たいないといけないのだ。というか基本的に私は他人の行動に興味がないのだが。
そのまま鳩原と本部に着くと、一番に東さんに出会した。…出会したって言うとなんかアレだけど。うん、とりあえず一番最初に会いました。
「鳩原に橘じゃないか」
「ドーモ、東さんお久しぶりです」
「こ、こんにちは東さん」
「なんだ、お前ら仲良かったのか」
驚いた顔の東さんに、ええまあと頷きながらちらりと隣の鳩原を見やる。鳩原は私が鳩原と仲が良いのを肯定するたびに照れる。そんなことで、とは思うが、鳩原曰くそんなことではないらしい。よく分からん。
「なんか意外だな」
「あーよく言われます」
「色々正反対だろうに」
「それもよく言われますー」
「しかし………そうか、お前らが」
「? 何ですか?」
「……いや、教え子達が仲良くなってくれて俺は嬉しいよ」
爽やか笑顔でそう言った東さんは本当にお父さんのようだ。うん、東さんいつでもお父さんになれると思うよ。あとは相手ですね、頑張れ。きっと東さんならすぐに見つかる。
東さんと別れ、訓練場へ着くと、すでに来ていた当真がようと手を振ってきた。ようと返してそちらに近づく。
「当真荷物置いて占領するのやめたら」
「お前らのとことっといてやったんだろ?」
「頼んでないんだけど」
しかしまあ私達にとっていたというのならありがたくそのブースを使わせてもらうことにする。結局使うんじゃねえかよと当真の言葉は無視して、鳩原も入ればと促す。
「なあ二人共、ちょっとゲームしねえ?」
「ゲーム?」
「馬鹿なこと言ってないで早く準備したら」
「まあまあそんな冷たいこと言うなよ」
そう言われて、気も半分に聞いた当真の話によると、そのゲームとは的に弾痕で絵を描いていく≠ニいう、狙撃手としては少々興味をそそられるものだった。いや、しかしまあ……
「私パス。今ランク戦シーズンだし、順位落としたくないから」
「あたしもちょっと………訓練でふざけてたって知られたら二宮さんに怒られそうだし…」
「ええ、なんだよ橘と鳩原なら出来ると思って声かけたのによー」
「あー、じゃああの子は? 最近ぐんぐん順位上げてきてる………なんだっけ、ナラサキ?」
「ナラサキィ? …奈良坂のことか? あいつは無理無理、くそ真面目だし」
そう言ってつまらなさそうに肩を竦めた当真は一人でどんな絵を描くか模索していた。…本当に腕は良いのに、勿体無いやつだ。
「鳩原どっちが上か勝負しようか」
「えっ」
さて、今日は的に誰の顔を思い浮かべようか。
訓練は真面目に