「是非! 弟子にしてください!!」
「え、やだ」
「はうッ」

 どーん、と土下座までしてきたそいつに、私が引き気味にそう答えると、そいつは何かに撃たれたように撃沈した。…え、なんだこいつ。
 隣で一緒に歩いていた当真はその光景に面白いものを見つけたと言わんばかりに笑っているし、目の前の少年が土下座をしているせいもあり、周りからの視線も痛い。きっぱり断ったのに「そこをなんとかぁあ!!」と食い下がってくる少年の姿は健気で痛ましい。いや私は特に感じることはないのだが、周りでヒソヒソ話をされているのがいただけない。いやどうせまたドライモンスターがうんたらかんたら言われてるんだろうから別にいいんだけどさ。…いいんだけど!

「つかあんただれ」
「ハッ す、スミマセン!! 鈴鳴第一の別役太一です!! 弟子にしてください!!」
「だからやだってば」
「なんだよ、聞いてやれよーそのくらい」
「当真は黙ってろ」

 隣で茶化してくる当真を睨んで、改めて目の前で土下座をしている少年――別役?を見やる。なんかべつやくって言いにくいな。

「鈴鳴……って確か来馬さんの隊だっけ」
「! は、ハイ!」
「というか鈴鳴って支部でしょ。私に教えを乞わなくたって他に色々いるじゃん。そっちに行きなよ」
「橘先輩がいいんです!!」

 うええ、なにこれ………何この子………何この純粋な目………え……やだ………関わりたくない無理……

「あ、おーい橘いたいた……ってあれ? 何この空気…」
「あっ、凩さん!! なんですか!? いやとりあえず作戦室行きましょう!! 今なら何でも言うこと聞きますよ!!」
「えっ!? なに!?」

 訓練室の入口の方に顔を覗かせた凩さんの背中を押して、ここぞとばかりに逃げる。後ろで別役とか当真とかの視線を一身に受けながら、それを無視して訓練室を出て行った。


 ▽


「橘先輩!! おはようございます! 弟子にしてください!!」
「おはよー無理ー」

 あの日から懲りずに弟子入りをせがんでくるようになった別役に、もう慣れてしまった私はサラっと流す。しかしこいつも飽きないなとうんざりした目を向けると、別役はそんなの気にせずに尊敬の目をキラキラと送ってくる。うへえ、ヤダ無理。そんな目には慣れてない。そんな目を私に向けるんじゃない。やめい。どっか行ってしまえ。

「これ以上付いてくるんなら模擬戦ブースで頭撃ち抜くぞクソガキ」
「体で教えてくれるってそういうことですね! 流石師匠!」
「ちげーよというか誰が師匠だ!!」

 あーもう調子狂う……と少し疲れた溜息を漏らしていると、隣で黙っていた鳩原が少し珍しいものを見たようにふ、と笑みをこぼした。

「こんな調子狂わされてる穂村初めて見た」
「…もうまじ無理………弟子とかいらない…」
「そんなこと言わないで一回引き受けてみればいいのに。良い子そうじゃん」
「そうっすよ橘先輩!」
「お前は黙れ」

 鳩原の言葉にまた溜息を吐き出し、別役を追い払ってから、ぽつりと言葉を吐き出した。

「………イイコだからダメなんじゃん」
「え?」
「考えてもみ? 別役が、将来、私の弟子になって、私みたいになるんだよ? ほらどうだいやだろ!?」
「ど、どうどう」

 まあ断っているのはそれだけではなく単に面倒だからというのもあるのだが、それはまあさておきとして、別役を私みたいにしちゃったら来馬さんに合わせる顔が無い。この間まで同じ学校で気にかけてくれていた来馬さんはなんというかどことなく凩さんと同じ感じの雰囲気が感じられる。割と来馬さんには懐いている私なのでいやほんと、来馬さんのとこの新人を私のようにしてしまうのは申し訳なさすぎる。

「私は二人ぴったりだと思うんだけど」
「いやー、無理っしょー」

 さてどーしたもんか。

弟子とか募集してない

SANDGLASS