「橘先輩おはようございます! 弟子にしてください!!」
「はよーむりー」
今日も今日とて攻防戦は繰り広げられる。
あれから毎日のように私のところに土下座にくる別役は、その一生懸命さと健気さで、私よりも周りの見物人の心をつかみきっていた。そろそろ了承してあげればいいのにね、なんてそんな声が聞こえるがそろそろってなんだよ私は一生了承するつもりなんかないぞ。
「今日も熱烈だね……」
「……あ、鳩原おはよ」
「おはよー」
別役の見事な土下座に苦笑しながら、鳩原が近寄ってきた。ようと片手を上げて挨拶をすれば、鳩原も同じように返してくる。とりあえず別役はガン無視である。
「橘先輩ぃ!!」
「だあもううるさい!! どっか行け!」
「行ったら弟子にしてくれますか!?」
「せん!! 行け!!」
「だったら行きません!!」
あーもう、面倒くさい。
▽
「はー………もうジュース奢ったげるからどっか行ってマジで」
ぐったりとして別役に自販機のジュースを渡すと、別役はそれはそれは嬉しそうにそのジュースを受け取って、「ありがとうございます!」と満面の笑みでそう言った。
いやまあ、本当にいいやつなんだけども。
「………あのさあ、別役」
「ハイ! …あ、弟子になるんだから太一で良いんですよ!」
「ならないから呼ばない。…いやそうじゃなくてさ、なんで別役は私にそんな執着するわけ?」
「え?」
別役はきょとんとして、私を見上げたまま首を傾げた。くそ、その純粋な目を向けるんじゃない。やめろ、なんかむかつく。
「執着、っていうか………おれ、橘先輩のランク戦見たとき、感動しちゃって」
「感動?」
「ハイ! おれもこんな風になりたいって思ったんです! おれもこんな風にかっこよく頭撃ち抜いてみたいなあって!」
「………」
「あとドライモンスターって異名もなんかかっこいいじゃないですか! 意味はよくわかんないですけど!」
「……………………」
……ああなんというか、馬鹿というかアホというか…………良い意味で。
ドライモンスターがかっこいいっていうのはよく分からないし(というかある意味蔑称だし)、頭撃ち抜きたいって本当に来馬さんに合わせる顔がないとか、まあ色々思うところはあるものの。
「…………はーあ………」
「え!? どうしたんですか!?」
「いや…………もうなんか相手するのも馬鹿馬鹿しくなってきて」
「えっ? な、なんでですか!?」
「馬鹿な頭でよーく考えてみー」
空になったジュースの缶をゴミ箱に捨てて、また大きく溜息を吐き出す。まったく、これだからイイコ≠ヘ嫌なんだ。
「ほんっとーに私みたいになっても知らないからね。……太一」
「………、、へ」
呆けた顔をした太一を置いて、私はスタスタとさっさと歩いて行く。
…その後、意味を理解したらしい太一が「よろしくお願いします穂村先ぱぁあいぃい!!」と飛びついて来たのは五分後のことだった。
攻防戦の行方は