「はあ!? 受け入れちゃったの!? 弟子入りを!?」
「ああうん……? なになんか問題あるの」
「くっそ穂村だから大丈夫だと思ってたのにというかあいつだって年下でも男なわけだし油断はやっぱしてらんないよな……」
「おーい犬飼ー。なにブツブツ言ってんの」

 私が太一を弟子にしたとどこからか聞いてきた犬飼が、なにやらすごい文句言ってくるのですがこれは一体なんなんでしょうか。
 高三になってまた同じクラスになった犬飼は席は離れたものの前と変わらず話しかけくる。まあその代わりに鳩原の前後の席になったので私的にはなんの問題もないのだが。ちなみに例の一人暮らし云々の話は結局叔父さんと叔母さんに「卒業までは一緒に暮らそう」と言われてしまい、未だ叶っていない。いやまあ、二人がいいんなら良いんですけども。まあそれはさておきとして。

「っていうか太一ってなに!? 俺穂村が下の名前で呼んでるやつ初めて見たんだけど!?」
「あれそーだっけ?」
「そうだよ!!」

 「俺も澄晴って呼んでよ!」って意味分からんのだけど。なんで私が太一を名前で呼ぶから犬飼も名前で呼ばなきゃいけないんだ。というかすみはるって呼びにくいからやだ。

「鳩ちゃんもやだよね!? 苗字呼び!」
「えっ!?」
「おいこら鳩原巻き込むなよ」

 私の前の席に座り黙って話を聞いていた鳩原は突然話を振られ、ビクリと肩をはねさせた。そうして当たり障りのない笑顔(二宮さん曰く貼り付いた作り笑い)を浮かべ、「いや別に…?」と首を傾げ曖昧な返事を返した。

「鳩原が呼んで欲しいなら呼ぶけど。未来って言いやすいし」
「えっ!? い、いやいいよ! 大丈夫!」
「……遠慮されると割と傷つくんだけど」
「え、あ、ごめん」
「鳩ちゃんが良いなら俺も呼んでよ!」
「だからお前の名前は呼びにくいからやだって」

 一蹴すると、ズーンと落ち込んでしまう犬飼に少し面倒臭げな視線を送る。えー……なんで落ち込むわけ、めんどくさ……
 そんな私に鳩原が「さすが容赦無い…」とやはり苦笑気味。なんでだよわかんねーよ。何、名前呼べばいいの? でもすみはるって呼びにくいしなやっぱ……うーんと、犬飼澄晴……だから、

「………イヌハル?」
「なんでだよっ!!」

 どうやらだめだったらしい。


 ▽


「………太一ー、もーちょっと右」
「! ハイ!」
「そっち左だろ右は逆だ馬鹿」

 その日の放課後、私は狙撃手用の訓練室で、太一から少し離れたところで本を読みながら指導していた。太一としてはどんな形でも指導してもらえるのが嬉しいようで、遠くからの私の指示に嬉しそうに従っている。

「もうちょい上」
「ハイ!」
「ハイそのままズドン」

 撃った弾は見事真ん中に命中した。おお、私の感覚指導もなかなかいい線いってるじゃないか。うん。しかし太一に「穂村先輩の普段やってる修行方法を教えてください!」と言われた時はどうしようかと思った。まさか的に適当なやつを思い浮かべてるとは言えるわけもあるまい。これでも太一を私のようにしないように必死なのだ。これでも。

「ふーん、でも太一あんた結構センスあるじゃんか。私ほとんど修正してないし」
「! ホントですか!」
「ん。割といい線いってる」

 褒めると、太一はこれでもかってほど顔を真っ赤にして、「おれがんばりますっ!」と練習を再開した。…あれ喜んでんのか。
 まあしかしこれでやる気出してくれるんならいい事だ。しかし何がどうなったのか知らないが、「ぅわあ!?」と突然後ろに転けてしまった太一に驚いて駆け寄る。何だこいつ一体どうしたんだ。

「太一? 何やってんの?」
「う………嬉しくてついはしゃいじゃって」
「………」

 この弟子の場合、どうやら褒め過ぎはいけないらしい。

どいつもこいつも面倒臭い

SANDGLASS