とりあえず太一にしばらく自分で練習しとくように言いつけて、私は訓練室を出た。ああもう、なんかあいつ素直すぎて疲れる。私の周りにあんまりいなかったタイプだ…と息を吐き出し、自販機でジュースを買った。太一にも買ってってやるかともう一本買う。私ってば超優しいじゃんさすがー。
とそこまで考えて、ふと、鳩原のことを思い出す。鳩原がいなくなってまだ少ししか経っていないのに、私は何度鳩原のことを思い出したのだろう。鳩原は今どこにいるのだろうか。学校にも来ないで、家にもいなくて、本当に、どこに。失踪、と、あやふやな言葉で片付けられたそれは謎しか残っていなくて、私はずっと、モヤモヤして仕方がない。果たして鳩原は、私の知っている鳩原は、人が撃てない℃鮪タから逃げ出して、姿を消すような人間だっただろうか。
考えていたら、気分が悪くなってきて、自販機に手をついてうずくまった。畜生鳩原、私をこんなに悩ませるとか、帰ってきたらぶん殴ってやるから覚えとけよ。そう考えて、立ち上がろうとしたとき、「大丈夫ですか」と、後ろから声がかかった。は?と振りむくと、見慣れた顔。
「うわ」
「おー辻くんじゃん」
声を掛けてきたのは二宮隊の女嫌い(苦手)としてお馴染み辻くんだった。私を見て瞬時に嫌そうな顔を浮かべた辻くんの腕をガシッと掴みにこりと笑みを浮かべる。というか君女の子に話しかけられないんじゃなかったのかなんで話しかけてこれたんだよ。聞いたら「男性かと思いましてというか放してください」と信じられない答えが帰ってきた。なんだと私のどこが男だよこんにゃろうテメエの目は節穴か。
「というかうわって何かな辻くんや」
「いえ別にうわあんたかよ≠チて思っただけです別になにも」
「そうかそうか、辻くん今暇なら模擬戦ブース入らない? 痛覚オンで」
「暇じゃないんで遠慮します」
「遠慮なんてしなくていいんだよーこっちもしないから」
「トラウマ植え付けられたくないんでいらないですというか腕放してください」
ギリギリと動かぬ攻防戦の後、どちらからともなく力を緩め、息を吐きだした。
「まー一応後輩の君にジュースでも奢ってやるけどなんか飲むかい」
「……結構です」
「あ、そ」
可愛くない、と呟くと不機嫌そうに「じゃあ珈琲をおねがいします」と帰ってきた。なんなんだよどっちなんだよ。しかし私は優しいのでとりあえず珈琲を買ってやると、辻くんは小さくお礼を言ってそれを受け取った。
「……大丈夫、なんですか」
「、は? なにが」
「、あ、いえ………鳩原先輩と、仲が良いと伺っていたので」
「ああ………別になんとも」
ないことはないが、大して話したことのない後輩に言うことでもないと、言葉を濁す。そもそも親友(だと思ってたやつ)がいなくなって平気なわけねえだろとツッコんでやりたいが我慢する。
「………」
辻くんは何か言いたげな顔で黙りこんでいる。が、聞いてやったりなんかしない。多分聞かれたら困ることだろうし、吐き出させてやるほど優しくもない。鳩原のことなら少し気になるが、とりあえずは何も聞かないでおこう。
「……悪いけど太一待たせてるから行くわ。ご心配ドーモアリガトウ」
「、ああ、いえ。珈琲ご馳走様です」
…太一ほど素直なのもあれだけど、こんな堅苦しい後輩もなんだか息が詰まりそうだ。
ほどほどが丁度いい