「あ、穂村せーんぱーい!」
「……あ゛?」
「おうなんか機嫌悪そう?」
あるとき、出水に呼ばれて振り返ると、何故かちょっと引かれてしまった。いやまあ多分私の機嫌の悪さが顕著に表に出ている証拠であろうが。今ちょっと私は機嫌が悪い。先ほど荒船と村上に誘われ援護として参加した模擬戦で、荒船に見事真っ二つにぶった切られてしまったからである。あーもうほんとムシャクシャする………誰か殴りたい…
「なんかあったんすか?」
「いやべつに」
「いや嘘でしょ! 人呪い殺しそうな目してますよ!」
「どんな目だ」
出水に返しつつイライラしていると、ふと出水の隣に見慣れない子がいることに気づいた。東さんみたいな髪型してるけど雰囲気は全然違う。誰だこいつ。私がその子を気にしているのに気づいたのか、出水がああと相槌を打ってその子のことを紹介してきた。
「コイツ唯我って言って、最近うちの隊に入って来たんすよ」
「ほー。太刀川隊。太刀川隊ってA級一位じゃなかったっけ。強いの?」
「あー………と、?」
「?」
歯切れの悪い返事を返す出水に首を傾げ、私はその……唯我?に視線を向けた。今機嫌が悪いので睨む感じになってしまったためか、ビクリと怯えられた。うわあ、なんかムカつく。慣れてるけど。今はムカつく。
「っていうか唯我今日口数少ないなー。なに、もしかして穂村さんがこえーの?」
「っ! そ、そんなわけないじゃないですか! このボクがこんな庶民に怯えるなんて…」
「ほー、そうなんだ」
「ッヒィ!?」
大して何もしていないのにビビられて、唯我は出水の後ろに隠れてしまう。強いて言うなら睨んだだけなのだけど、そんなに怯える奴は初めて見た。…こいつほんとに強いのかな……でも太刀川隊だしなあ…
「……あ。そーいや出水なんか用?」
「あ、そうだった! 今から模擬戦しようと思ってたんすけど、また変わったことやろうってことで、即席チーム作ってんすよ!」
「ほう」
「んで今いろいろ集めてて………銃手は今コイツしか捕まんなかったんですけど。適当に人集めたらあっちでグッパしてチーム分けするんで付いて来てくれません?」
「えー………………うーん……………まーいーかストレス発散になるかも……」
「いッ 出水先輩ッ!!」
「ぅおっ!?」
了承すると、唯我が何やら出水を引っ張りコソコソと話を始めた。多分私を入れるのが嫌なのだろうなと思いつつ、ぼんやりとそれを眺める。おい今私は気が短いぞ早くしろ。
少しすると、パッとこちらを向いた出水が笑顔で「行きましょーか穂村さん!」と腕を引っ張ってきた。唯我が何だか絶望した顔をしている。…いやまあ、私的にはなんの問題もないからいいんだけども。
模擬戦ルームに行くと、米屋と犬飼、それと今回は当真ではなく知らない男の子が待っていた。帽子をかぶっていて、何だか怠そうだ。
「おっ! 穂村じゃんなんか意外!」
「うるせえ今話しかけんじゃねえ」
「機嫌悪ッ!!」
うるさい犬飼に安定の反応を返しつつ、それぞれ同じポジション同士でグッパをして、チーム分けをした。私の相手はあの帽子の子で、知らない子かよと思いつつグーを出す。一発で決まったので特に話すこともなく、しつこく絡んでくる犬飼に意識を向けた。
「穂村ー! どっち? おれグー!」
「げ。私もグー」
「げってなに!?」
結局チームは米屋、犬飼、私と出水、唯我、あの帽子の子という編成になった。変わらずダルそうな帽子の子になんだか親近感が湧くがまあそれはさて置こう。いやでもなんかこの子見たことあるような気がする。ランク戦かな。すっごい最近見た気がする。
そうして模擬戦が始まり、私は呆然とする。
「(え…………唯我ってやつ弱くね?)」
あの動きでA級一位? 何あれ? あれなら凩さんのが全然強いじゃん。いや凩さんは強いんだけど。良くてB級中位……行くか行かないかの実力じゃないか。みたところ。
「(まー…………今は脳天ぶち抜ければいーや)」
気まぐれで変えることもあるが、いつも使っている愛用のアイビスを構える。威力重視で重いのが欠点とされているアイビスだが、私はどの道軽かろうが重かろうが見つかったら動けないので、威力重視のアイビスを愛用している。これで撃ち抜いたときが、一番気持ちがいい。
「…………ずどーん」
少しだけふざけて、引き金を引いた。唯我の頭は見事に吹き飛んだ。
「…………ふう」
あれ、そういやなんで怒ってたんだっけ。
スカッとしたい