とある日、ランク戦も訓練も任務も何もなく暇をしていたのでブラブラと訓練室に顔を出すと、見慣れた顔を二つ見つけ、思わず首を傾げた。
「………当真と絵馬くんだ」
なんだか珍しい組み合わせだ。いや私は絵馬くんと大して仲が良いわけでもないので珍しいかどうかはよく分からないのだけども。しかしやはり見たことのない組み合わせだ。首を傾げたまま、二人に近づく。ちょうど暇していたので相手をしてもらおう。
「おーいやっほー」
「ん? おー橘じゃねえか」
「……、」
「何やってんの?」
問うと、当真が少し離れたところにある的を指差しにっと笑った。なんかドヤァってしてる腹立つヤメれ。…というか地味に絵馬くんが睨んできてる気がするんだけどツライ。
当真の指差した的を見てみれば、弾痕で見事なニコちゃんマークが描かれている。ああ前訓練の時言ってたのを実践してたのかと納得してそれが二つ並んでいることに驚く。もしかして片方絵馬くんがやったのか。
「……流石鳩原の弟子」
「………」
「今の師匠は俺だけどな〜」
「違う」
冷たい声色で、絵馬くんがそれを否定した。否定されてやんのー、と笑ったりはせず、ジッと次の言葉を待つ。否定された本人は「相変わらずツレねえなあユズル」とへらへら笑っている。
「…オレの師匠は鳩原先輩だけだ」
鳩原はいい弟子を持っている。
▽
「絵馬くん」
「、……橘、さん」
「ドーモ。さっき振り」
その後当真と別れ、廊下で見つけた絵馬くんにヒラヒラと手を振り、近付く。絵馬くんはペコリと小さく会釈をして、私の方に向き直った。
丁度近くにあった自販機で、飲み物を買う。
「絵馬くんは? なんかいる?」
「………いらない」
「お茶でいいね。はい」
「………」
何か言いたげな顔でお茶を受け取る絵馬くんににこりと笑う。私が買ってやるって言ってんだから断ることは許さない。
「絵馬くん、ちょっと話そう」
そう言うと、絵馬くんは断ってもどうせ強制なんだろと悟ったのかコクリと頷いた。ラウンジまで歩いて、空いている席に適当に座った。
自分の分のお茶を開けて、未だ蓋を開けていない絵馬くんに開けてあげようかと言い終わる前に絵馬くんは自分で開けて飲み始めた。可愛くない。
目で早く話せと促されて、仕方ないと肩をすくめて話しだす。
「………絵馬くん鳩原のこと大好きだよね」
「………別に。尊敬してる、だけ」
「人が撃てなくても?」
「そんなの関係ない。鳩原先輩はすごい人だ。誰よりも精密で正確な射撃ができる」
この子本当に鳩原のこと大好きだなあ。考えていると、今度は絵馬くんが質問をしてきた。
「アンタは、鳩原先輩の親友だって言ってた」
「うん。そうだね」
「なのに、どうしてそんなに平気そうなんだ。もう笑って過ごしていられるんだ。親友が、いなくなったのに」
「………」
ジッと睨まれて言われたそれに、少し考える。
「皆そう言うんだけどね。別に平気なわけじゃないよ」
「、」
「親友だと思ってた奴が居なくなって、平気でいられるほど、皆の言うドライモンスターじゃないよ、私は」
「………」
「ただそれが表面に出てきてくんないんだよね。そういう感情が」
そう言って、ジッと絵馬くんを見る。絵馬くんも見返してくる。結局私は何を言いに来たんだっけ、とボンヤリ考えて、ふうと息を吐きだした。
「絵馬くんもさ、いつまでも思いつめないほうがいいよ」
「、」
「多分、鳩原なら大丈夫だから」
そう言って、立ち上がる。
またらしくないことをしたなあと考えて、まあ鳩原の弟子だからいいかとふ、と笑みを零した。
らしくない、それもいい