「木崎さんのご飯素晴らしいな…」

 ボソリと呟くと、隣で銃を構えていた荒船がはあ?と顔を歪めてこちらを見た。
 あの凩さん誘拐事件≠ゥらしばらくして、宇佐美ちゃんからご飯を食べにこないかと誘われたので凩さんを連れて玉狛にお邪魔した。感想だけ言うと、マジで美味すぎてあんたホントに男かよと一瞬疑ってしまった。そして将来結婚するなら料理上手な人がいいと実感した。凩さんは「名風も連れて来ればよかったなー」とか言って小南ちゃんをやきもきさせていたがまあそりゃ不安にもなるよなーと大して話したこともない小南ちゃんに同情した。まあうちの隊三人しかいないけど凩さん以外は女だからね。扱いとってもひどいけど。とりまるとは割と話せた。全然表情変わらない無表情野郎だけど面白い奴のようだ。そして年下だということに驚いた。普通に同い年かと思ってた………敬語が癖なのかと。あと玉狛にはカピバラが一匹と男の子がいたのだが、私がそちらを睨んだだけで半泣きで怖がられてしまった。うーん昔から子供には好かれないんだよなあと頭を掻いていたらビビってるくせにソロソロと近づいてきたので相手をしてやれば、帰る頃には結構懐かれていた。いやそれにしてもなぜカピバラと五歳児がいたのか不思議すぎる。びっくりした。
 因みに前回玉狛に行った時の帰り(凩さん誘拐事件≠フ帰り道)、凩さんに迅さんの発言あれ何なんですかと聞いてみたら、どうやら迅さんには未来視のサイドエフェクトがあるらしい。へー未来視とか最強じゃんとか思ったが未来見えてもつまんないかとすぐに興味をなくした。いやでもああ言ったってことは凩隊が玉狛に転属する未来が見えたってことだろうか。まあ絶対無いけど。フラグはへし折ったし。

 そして冒頭でサラッと言ったが、隣で荒船が銃を撃っている。狙撃手用の銃だ。どうやら先日、攻撃手から狙撃手へとポジションチェンジしたらしい。

「え、なに攻撃手飽きたの?」
「お前の頭ん中話題変わりすぎな。…いや飽きたからで変えるわけねーだろ」
「いやあ向いてないから変えるーみたいな話聞いたことあるからさー。私あの子とは仲良くできる気がしない」
「誰のことだよ。…飽きたわけじゃねーし」
「ふーん…………じゃあ村上にポイント抜かれたから?」
「!」

 荒船が大きく的から弾を外した。何やら恨めしげな目を送ってくるが無視だ。それにしてもこの反応、図星なのか?

「図星じゃねーよ」
「えー嘘だー」
「お前があまりにもサラッと人が聞きにくいこと聞いてくるからだろ」
「いや別に。そりゃー悔しいでしょ、入ってきたばっかの村上にポイント抜かれたら」
「そりゃー悔しかったけど………本当に違うんだよ、変えた理由は」

 そう言って、荒船は「撃つ気分じゃなくなったからラウンジ行くぞ」と立ち上がった。どうやらラウンジで話すらしい。


「…元々8000点越えたら攻撃手辞めるつもりだったんだよ」
「ふーん…? 8000点ってマスタークラス?」
「ああ。狙撃手もマスタークラスまでいったら次は銃手にいって、木崎さん以来の完璧万能手を目指すんだ」
「…ほー」

 木崎さんって完璧万能手だったのか。
 とりあえず出てきた感想はそれだけで、他は特に何も浮かばなかった。それにしても荒船って本当に向上心の塊というかなんというか……ムカつくやつだが凄いやつだとも思う。私には出来ない。

「将来的には経験を理論で一般化して、完璧万能手を量産しようと思ってる」
「え。なにそれでかすぎ」
「夢はでっかく持つもんだろ。お前も鳩原を探すとか夢持っとけよ」
「えーいやいいよ………多分そのうち帰ってくるし……」
「お前ほんと冷たいな」
「うるせえ黙れ」

 まあしかしこれでしばらく荒船にぶった切られることもないなら、私的には良かったのだけど。

攻撃手を辞めた理由

SANDGLASS