「いらっしゃいませー」
「はい、お願いしま………あ」
「え」

 行きつけスーパーに行ったら、とりまると出会しました。
 …とまあ、またまた言葉が足りないので補足すると、私が客で、とりまるが店員、つまりレジで立っていたのだ。お互いに驚いて数秒固まったが、すぐに何事もなかったかのようにとりまるが動作を再開した。私もそれに倣い、ポケットから財布を取り出す。

「橘先輩、ここよく来るんすか」
「コンビニよかここのが近いし安いからねー。というかよく来てるけどとりまるのこと一回も見たことないんだけど。最近始めたの?」
「最近っちゃあ最近ですけど。四月辺りから。会わなかったのは多分、俺がずっと裏方やってたからですね」
「マジかよじゃあずっと裏方やっとけよ…」
「あ、俺と会いたくなかった感じすか」
「というか店で知り合いと会いたくない」

 何買ってるかとか知られたくないこの心情が分かるだろうか。そんなもんすかね、と良く分かっていないらしいとりまるにそんなもんだと頷いて、通された値段を見てお金を出した。うーん、結構いったな…

「とりまるまけてよ」
「バイトごときに無茶言いますね」
「流石に冗談だけど」
「先輩冗談言うんですね」

 とりまるはお金を受け取ると、ピピピッとレジを叩いて、お釣りを返してきた。おう、早いな。ついでに器用だわ。なんでもそつなくこなす感じなんか腹立つわー。

「一人なんすか? こんな時間に」

 とりまるが店の時計を見て言った。こんな時間って、こんな時間にバイトしてるお前には言われたくないよ。

「いや、本部からの帰りだから、名風ちゃんと凩さんと一緒。凩さん車持ってるから送ってもらってんの」
「へえ。小南先輩が泣きますね」
「凩さんの助手席に一番に乗ったのは二宮さんらしいから大丈夫」
「何がですか」

 何というか、凩さんを狙う上で一番のライバルって正直二宮さんだと思うんだよ。次は私か名風ちゃんだろうけど。まあそれは超大事に思われてる家族みたいな。うん、そんな感じなんだけど。二宮さんって凩さんの幼馴染らしいし仲良いし、何だかんだよく一緒にいるし。きっとそっち方面が好きな人にはそういう風に見えてたりするんじゃないだろうか。

「…まあ、一人じゃないなら良いですけど。気をつけて帰ってくださいね」
「おー」

 イケメンかよ畜生。
 ビニール袋を手に提げて、内心でそう吐き捨てながら、私は凩さんたちの待つ車へと戻った。

 車に戻ると、凩さんと名風ちゃんがイヤホン片耳ずつ付けて音楽を聴いていた。ええ、何そのカップル感……ホントに小南ちゃん泣いちゃうんじゃないの。

「あ、お帰り橘」
「、お帰りなさい穂村さん」
「うぃーすただいまー。凩さん名風ちゃんだと流石に犯罪臭いですよ」
「何の話!?」

 凩さんの叫びには答えずに、私は凩さんの隣に乗り込んだ。ごめんね小南ちゃん、凩さんの助手席座って。多分頼めば座らせてくれるよ。

「今スーパーのレジにとりまるがいましたよ」
「え、とりまる……って烏丸? へえ、こんな時間までバイトしてるんだ。大丈夫なのかな」
「さあ」

 凩さんの言葉を軽く流して、とりまるの名前が出た途端ビクリと反応した名風ちゃんを振り返った。…何やらソワソワしている。

「………名風ちゃん?」
「、な、何ですか?」
「……あーいや何でもない」

 うわあマジかよとチラチラスーパーの方を見ている名風ちゃんに絶句する。…うん、名風ちゃんも矢張り女の子だったということだ。まあとりまる無表情で何考えてるかわかんないけどイケメンだもんね。後まあ面白いもんね。うん。良いと思うよ名風ちゃん。私にはよくわからないけど。

「……まあでも小南ちゃんの趣味もよく分かんないんだけど」
「え? 何か言った?」
「イエ別に。それよりちゃんと運転に集中してくださいよ。事故ったら脳天ぶち抜きじゃ済みませんよ」
「えっ、怖いッ!!」

 ううむ、恋とはよく分からない。

恋とはなんぞ

SANDGLASS