三輪隊、というものが存在するらしい。なんでも、少し前、東さんが率いていた隊に、二宮さんや加古さんと共に所属していた私より一つ下の男の子の隊なのだとか。それに、後輩である出水の友達……まあ詰まるところそいつも後輩ということになるのだが、の、米屋陽介が所属しているらしいというのが、私の隣でぺらぺらと喋っている出水からの情報?である。
「ふーん………三輪隊ってA級の」
「そうなんすよー。まあ、おれらには敵いませんけど?」
そう言ってドヤ顔を晒す出水にもう一度興味のなさ気な返事を返すと、出水が少し不満そうな顔をして、「つーか」とまた話を切り出した。
「凩隊だって十分A級に上がる実力あんのに、なんでA級に上がらないんすか」
「あーそう? そりゃどーも」
「適当に返事しないでくださいよ! 冗談じゃねえし!」
またまた適当に返事を返す私に、出水が憤慨して怒る。A級ねえ、と私は先ほど自販機で買ったパックジュースをズズ、と吸った。
「まー別に目的もないし」
「目的があればなるんですか」
「なるっていうか、目指すかもね。というか、A級に上がるには私は割と足手まといだと思うけど」
「…? そんなことないと思いますけど」
「目先の一点はあんまり重要じゃないんだよね」
「…??」
首を傾げる出水にはそれ以上何も言わず、私はもう中身のないジュースを再度吸った。
▽
私は、狙撃の腕だけならトップクラスであると自負している。正確に脳天をぶち抜く技術が誰にだってあるわけではないし、私だって相当な練習の上でのあの芸当を繰り広げているわけだ。そういうわけでまあ、狙撃の腕だけを見るなら、私はA級に上がっても遜色ない腕前ではあると思うわけだ。
しかし私の欠点というか、凩さん曰く勿体無い≠ニころは、技術云々ではなく、その機動力にある。
狙撃手は見つかったら終わりだ。それこそ、荒船のように、元攻撃手とかで無い限りは、寄られたらほぼ確実に終わりなのだ。
私にはその機動力が圧倒的に足りない。A級に上がるにしても上がらないにしても、機動力は当面の課題になっている。
「ねーユズルはどう思うよ?」
「………べつに。どうでもいい」
「ほうどうでもいいときたか」
隣で的を狙っているユズルにしつこく話しかけてみるが、ユズルは鬱陶しそうにするだけでそれ以上は答えてくれない。そうしていたら太一が「せんぱーい!」と騒ぎながら飛びついてきたのでとりあえずユズルから意識を逸らした。
「……うーん、機動力なら下手したら太一のがあるんだよなあ」
「へ? なんですか?」
「なんでもない。暑苦しいから退いてくんない」
「ええ!! トリオン体だから暑くないでしょ!?」
「なんか気持ち的にあっつい」
良いから退けろと太一の頭を押しやって、また思案する。
機動力。狙撃手はただ弾が当たればいいと思っていた時期が私にもあった。しかし目先の一点だけを狙うならそれでいいかもしれないが、うちの隊には戦闘員が二人しかいないわけで、詰まるところ私がやられれば凩さんへの負担が二倍になるわけだ。今までだって目先の一点ばかりを狙ってきて、最近では一点取ったら直ぐにやられてしまうのがパターン化し始めていたりしているし。これじゃあプラマイゼロだ。私のいる意味がない。
「……いやいや、だめじゃん」
「へ?」
「………」
思わず呟くと、太一が反応し首を傾げ、ユズルが鬱陶しげに視線を寄越した。太一はまあ置いとくとして、ユズルは何なんだよ私に対してひっどいな。
「どうしたんですか? 穂村先輩、今日ちょっとへんですよ」
「変じゃねーよ死ね馬鹿弟子」
「えぇッ!!」
ガーン、とショックを受けた太一を一瞥して、ふうと溜息を吐き出した。まあ、別に今A級に上がりたいわけじゃないし、悩んでいたってどうにもならない。
「…よし太一、ユズル。修業するか」
「…! ハイッ!!」
「は? なんでオレがあんたと…」
「いーからやるよ。はい構えー」
「………」
渋々ながらに銃を構えるユズルに、思わず笑って、アドバイスをしていく。うーん、相変わらずアドバイスする隙もないな、ユズル。太一はもう少しかな。
「変なの」
ユズルは不機嫌そうに、小さく呟いた。
らしくもなく悩みごと