前にも言ったが、私の当面の課題は機動力だ。弾は当たるが、撃って見つかった後にまるで動けないので他の敵にすぐに斬られるか蜂の巣にされてしまう。つまり、ほぼプラマイゼロで意味がないのだ。これではいけない。例えマグレでA級に上がれたとしてもやっていけない。そもそも機動力なんて狙撃手にとっては基本中の基本じゃないかなに私は今までサボっていたんだアホか。私より腕がずっと上の鳩原より順位上だったから調子乗ってた。くそ、数年前の私を恨みたい…
 しかしまあ過去のことはどう思い返そうと変わらないので、とりあえずは修行あるのみだ。それには自主練は勿論、相手と師がいる。

「というわけでお前は破門だ太一」
「ええええ!? どういうわけですか師匠!?」
「とってつけたように師匠とか言うな馬鹿太一。破門は冗談だけどさ、こっちも忙しいしひとまず修行とかは当分無し。見てやれないから」
「ええええ………そんな………」

 ズーンとあからさまに落ち込む太一に、ふうと息を吐く。なにをそんなに落ち込んでるんだか…師だったらその辺にはいて捨てるほどいるだろうに。

「穂村先輩!!」
「…なに」
「修行はしなくても、会いに来るのはいいですよね!?」
「それ来る意味あんの………別にいいけど」
「よっしゃ!!」

 グッとガッツポーズをする太一に首を傾げつつまあなんか嬉しそうなので気にしないことにした。太一はいつも変だし。


 ▽


 それからまあ、太一という弟子もいなくなり(一時的破門)、私はどう機動力を身につけるかを考えていた。自販機でジュースを買いながらうーんと唸っていると、「穂村さんっ」と肩を叩かれた。

「なに唸ってんすか?」
「……げぇ、出水」
「げぇってなんすか!! ひでえ!!」
「だってあんたと会うといっつも模擬戦させられるなと思って……」
「今日は違いますし!! フッツーに穂村さん見かけたから声かけただけて!!」
「用もないのに?」
「用……は、ないですけど!!」

 「だって弾撃った後の顔が…」うんたら言っているのが聞こえたが最後のほうが聞き取れず、なに?と聞き返す。「なんでも!」と誤魔化されてしまったがなんだったんだろう。変な奴だ。

「で、何唸ってたんすか?」
「んー、まああんたらには縁のない悩みだよね」
「なんか嫌味…」
「嫌味で結構ー」

 そうしてなんとなく誤魔化していると、不意に出水が「あ、じゃあ気分転換に模擬戦とかどうすか」と提案してきた。結局模擬戦やるんじゃん、とか思ったがまあ気分転換にはいいかもしれないなと頷く。二宮さんと出会すと乙ゲー展開が多いが出水と出会すと模擬線フラグが建つな………射手ってあれかなフラグ建築士が多いのかな不思議。

「穂村さん模擬戦やるなら俺の心臓ぶち抜いてくださいよ! 頭じゃなく心臓!」
「お前マジ意味分からん。気持ち悪い…」

 なんでそんな心臓撃たれたいんだよ怖いよなんか狂気感じるんだけど………もしかして最初心臓撃ち抜いたから嫌がらせかな……うわ出水こわ。一見懐いてるくせに。そんなこと考えてたのか……

「私は心臓二度と撃ちません」
「ええっ、何でっすか!?」

 なんで残念そうなんだよ。


 ▽


 そうして出水と並んで模擬戦会場に行くと、何人かが模擬戦をしていて、ちらほらとモニターに様子が映しだされていた。隣で出水がそのモニターの一つを見て、「お、」と声を上げた。なんだ。

「緑川じゃん」
「? ミドリカワ?」

 聞き慣れない名前に首を傾げ聞き返すと、出水はああと説明をしてくれる。

「最近入ってきた攻撃手で………もうすぐA級に上がりそうなんすよね」
「……へー?」

 出水の説明に相槌を打ちながら、私はなんとなしにモニターを見た。そこには快活そうな男の子と米屋の二人が映しだされていて、中々の接戦が繰り広げられていた。
 そのままじっと見ていると、ちょろちょろと動きまわるミドリカワ?の動きに、ふと先ほどの悩みが浮き上がってきた。

「機動力……」
「…え? なんか言いました?」
「来た。ミドリカワだ」
「は? 緑川がどうし……え、穂村さん!?」

 突然前へ歩き出した私に驚く出水。私はそれを無視して、模擬戦を終えて出てきた緑川の元へ向かった。

「ミドリカワ」
「、は?」

 突然目の前に現れた私に驚くミドリカワ。私は意を決して、頭を下げた。

「私を、弟子にしてください」

課題を直すために

SANDGLASS