先日、隠岐のいる隊……ええと、生駒隊?とランク戦であたった。生駒隊は大阪からスカウトされた人たちの集まりらしく、やはり関西人だからか楽しそうな雰囲気の隊だった。結果だけ言うと、試合に勝って勝負に負けた、って感じだ。もっと詳しく言うと、隊としてはギリギリ生駒隊よりポイントを多く取れたものの、私は隠岐に心臓を撃ち抜かれて緊急脱出した。それなりにポイントは取っていたものの、最近は逃げきれる場面も多かったのでそりゃあもう悔しかった。マジ隠岐許さん。しかしその後凩さんが活躍して、全員倒すまではいかなかったもののそれなりのポイントを稼ぎ、あとは制限時間まで逃げ切っていた。最近どうしたんだ凩さん格好良いぞ。

「腹がたって仕方がない」
「まあまあ、堪忍したってください」
「手加減されなかったのはいいけど、実力で負けたのが腹立たしい」
「俺に怒ってるわけやなさそうですね」
「なんで隠岐に怒んの、と言いたいところだけど、まあ実際隠岐にも苛立ってる。その辺は勘弁して。八つ当たり」
「はは、穂村さんの八つ当たりなら喜んで」
「うぜー」

 八つ当たりは申し訳ないと思うけどこれは腹立つぞ。何だよ喜んでって。馬鹿にしてんのか。

「まあまあ、勝ったんやからええやないですか。それよりも次は二宮隊らと四つ巴ですよ、なんか作戦とか練っとるん?」
「まあ、それなりに。凩さん、ああ見えて作戦立てるのとか下手だから、ほぼ名風ちゃん任せだけど」
「凩さんなあ……イコさんとの対戦は見ものやったなあ」
「よく話題変わるなお前」

 まあ確かにあの戦いは凄かったけど……決着はつかずにタイムアップだったから勝敗は決まらなかったけど。あの旋空孤月?ってやつ、あんな射程距離が広いの初めて見た。太刀川さんより広いってやっぱ凄い。でも試合終わったあとにいろんな女の子見て可愛い可愛い言ってたのと試合のログで全部カメラ目線だったのには驚いた。やっぱ凄い人って変わった人多いんだなって思った。

「っと、ごめん。ちょっと隊で集まりがあるから今日はこれで終わりにしていい?」
「ん? ああ、ええですよ。ほな、また」
「おー、ありがと」

 ひらひらと隠岐に手を振って、さっさと訓練室から出て行った。


 ▽


 二宮隊含む他の隊のと四つ巴では中々の苦戦を強いられた。四つの隊の中で一番順位が下の隊が選んだ市街地Cは、私達狙撃手に有利な地形だった。上を取れば、私はかなり有利になれる。しかし転送された先はかなり下の方で、まずこの時点でかなり不利な状態に追いやられた。

「こちら橘ー。今からでも上行きますけどあんまり期待しないでください」
『いやいや、そこでこそグラスホッパー使えよ』
「私グラスホッパーでの連続移動まだ出来ないんですよ」

 未だあの踏んだ瞬間に跳ばされる感覚に慣れない私である。連続使用なんて出来て二回までだ。そしてそれも着地が出来るとは限らない。二回使ったあとにゴロゴロ頭から転がっていくのはよくあることだ。

『あー、分かった。まあ無理せずに、いつも通り。俺も頑張って二宮…とか辻とか…取りに行くから…』
「超やりたくなさそうですね」
『いや普通にこえーから……まあ、とりあえず上取って。上取れば後はイケるだろ』
「はーい。橘了解」

 通信を切って、私はバッグワームを着たまま上を目指す。勿論ちゃんと隠れながら、他の隊を見つけたら迂回して。かなり面倒くさかったが狙撃手なんてこんなもんだ。荒船はまあ、孤月抜けばいい話だろうけど。荒船強いしなあ………何回ぶった斬られたことか。あ、思い出したらイライラしてきた。

『穂村先輩、その先の角曲がったところに犬飼先輩がいます。迂回してください』
「っと……ほんとだ」

 角を曲がる前に名風ちゃんから指示が入って、直前で止まる。そっと角から覗くと、確かに犬飼が誰かと通信していた。犬飼は銃手で結構強いと評判なので一対一で対峙するような真似はしない。
 迂回しようと踵を返した時、ふと角の向こうから声が聞こえた。

「穂村、いるの分かってるよ」
「!」

 げ、と顔を顰めたのはまあ許してほしい。最悪すぎるだろ、なんで気づくんだか。
 慌てて走って逃げるが、多分足は犬飼のほうが速いのですぐ追いつかれる。犬飼に追いかけられるのは変な気分だ。
 犬飼が数発撃ってきた。腰辺りと、脚に少しかすった。

「チッ………くそ、」
「穂村転送位置悪かったみたいだね。まあこっちとしてはラッキーだけど」
「うるせー黙れ」
「相っ変わらず口悪いな………まあでも今回は俺の勝ちってことで」
「さてね……」

 どうだか、と呟いた時、犬飼が何かに気付いて振り返った。そして反射か、シールドを張る。そのシールドを叩き割る勢いで孤月を振り下ろしたのは、我らが隊長凩さんだった。

「見つからないようにって言ったのに馬鹿!」
「凩さんに馬鹿呼ばわりされたくないんですけど」
「うわあ、凩さんかよ………応援来るのはっや」

 引き攣る犬飼を横目で見て、私は凩さんに感謝しながらまた足を動かした。さっさと上行こう。

「すみません、穂村取り逃がしました」

 少し後ろで、犬飼のそんな声が聞こえた。 


 それからは特に誰かに見つかることなく、時々迂回しながら上にやってきた。若干の疲れを感じつつ取り敢えず一人、狙って弾を撃った。見事脳天直撃。はあ、気持ちいい。この時のために私は生きてる気がする。
 移動しながら何発か撃って、たまに外しながらも点を稼いでいく。ある程度撃ったら凩さんの援護でもしに行くか、と考えていた時、ふと後ろに気配。パッと後ろを向くと、二宮さんがバッグワームを着て立っていた。うわあ、名風ちゃんが何も言わなかったわけだ。

「…どーも、二宮さん」
「………」 

 二宮さんと対峙するのは、あの凩さんとの出来事以来だった。私は少し離れたところに立つ二宮さんから逃げる方法を考えながら、思わず笑った。

 さてと、どうしよう。

二宮隊とのランク戦

SANDGLASS