「というわけで宜しくユズル」
「何がというわけなのかさっぱり分からない」

 ユズルは心底嫌そうに私を見た。相変わらず私はユズルにあまり好かれていないようだ。気にせずにA級認定試験のことだと言うと、ああ、と更に顔を歪められた。

「カゲさんが、凩さんとやるの楽しみだって言ってたよ」
「ふーん。私はユズルとやるのが楽しみかな」
「オレはやりたくない」
「えーひどいな」
「オレになら勝てると思った?」
「、」
「あんまり舐めるなよ」

 鋭い眼光。思わぬ一言に驚いて、私は固まったまま何も言えずに目を瞬かせた。しかしすぐに回復して、弁解する。

「そんなこと思ってないよ」
「は? 嘘だ。絶対A級に上がりたいから、勝てそうなとこ選んだんだろ」
「違うってば。ユズルに勝てたら、私はA級でもやってける狙撃手って証明されるかなと思って」
「……、」
「後、鳩原の弟子に認めてもらおうかなと思って」
「……何それ。別にオレに認めてもらわなくたっていいじゃん」
「いやあ、なんか気持ち的にね?」

 ユズルは順位こそそんなにパッとしないものの、鳩原と同じくらい精密な射撃ができることを私は知っている。それにユズルに認めてもらえれば、鳩原に許してもらった気になれる、かもしれない。何を許してもらうんだ、とは思うし、卑怯な考え方だな、とも思う。だけど、鳩原に会いに行くという果てしない目標を追う中、そのくらい、救いがあったっていいと思った。

「…手加減はしないから」
「はは、当たり前」

 ユズルは鳩原とはまた違った感じに素直じゃない。


 ▽


 次の近界遠征の日取りが決まったらしい。出水や当真が自分たちも行くからと報告してきた。近界に行きたいわけではないが、鳩原を探すために目標としている私はその報告に若干の苛つきを感じながら、それを表に出すのは抑えた。遠征報告はいつものことだ。怒っても仕方ない。
 そんな中、A級認定試験の日が来た。

「うっわあ……緊張するな…」
「そうですね」
「嘘だろお前全然緊張してないじゃん!」
「失礼なしてますよ。ガックガクですよ」
「嘘吐けよ!! めっちゃいつも通りだよ!? どこが震えてんの!?」
「分かんないほど小刻みに」

 そう言って凩さんの手を握ると、「うわマジだすげえ」と妙に感心していて笑ってしまった。私だって緊張はする。これで落ちたらどうしよう、とか色々頭の中をめぐっているし、体だって震えている。決して武者震いなんかじゃない。普通に怖い。

「凩さん、穂村先輩」
「ぅおおう!? わ、和歌か…! なに? どした?」
「そろそろ始まりますよ。スタンバイしないと」
「お、おう……和歌冷静だな……」
「闘うのは私じゃないですからね。それに、二人のこと信頼してますから。きっと勝ってくれるって」
「!」
「そのために、私はできる限りのサポートをします。だから、頑張りましょう」

 名風ちゃんのその台詞に、私と凩さんは顔見合わせる。そしてふ、と笑って、頷いた。

「うん、頑張ろう。俺もお前らを信頼してるよ」
「うわあ凩さん恥ずかしー」
「なんで俺の時だけそういうこと言うの!?」

 慌てる凩さんに笑う。

「私も信頼してますよ、二人のこと」
「! 穂村…」
「なので影浦よろしくお願いしますね。まあ多分そっち行くでしょうけど」
「げ」


 ▽


 一斉に各場所へと転送された。いつもは三つ巴やら四つ巴で最初は人がいっぱいいるので相手が影浦隊だけというのはなんだか少し変な感じだ。
 取り敢えず上に行くか、と上を見上げると、通信機から名風ちゃんと落ち着いた声が耳に届いた。

『凩さん、穂村先輩。北添先輩のメテオラ来ます』
「え」

 その言葉通り、見上げた先に丁度落ちてくる光。うわあ、と顔を引きつらせて走った。ドーン、と後ろに落ちた衝撃と爆音。
 でたよ、ゾエさんの適当メテオラ。レーダー頼りに取り敢えず撃ってるからまず当たらないらしいけど当たったらダメージすごいなこれ。
 妙に感心していると、凩さんから通信が入った。

『穂村!? 当たってない!? 大丈夫!?』
「うるさい。聞こえてますからボリューム下げてください。当たるわけないでしょうが本人も当たるとも思ってない適当攻撃な上に名風ちゃんからの注意があったんですから」
『そ、そうだよな……うん。あ〜良かった』

 まったくこの人は、すぐに慌ててしまうところがキズだ。ヘタレなところとこれがなければ普通に頼れる隊長なのだが……まあそれを抜いたら凩さんじゃないので別にいいんだけど。

「とりあえず私はゾエさんとユズル引き受けますね」
『分かった。出来れば早めにどっちか倒してくれると助かる、援護がなくて』
「了解」

 通信を切って、溜息。
 さてどう点を取ろうかな。

認めてほしい

SANDGLASS