「えー、入隊指導? だっるい嫌です」
「いや、嫌ですじゃなくてな…? 今回は嵐山隊とサポートとして凩隊がやることになってんだから。仕事なんだよ仕事」
「えーめんどくさ…」

 さて、年も明けまして、ボーダーに新しく隊員が入隊してくる時期になりました。確か今度の一月八日が入隊式だったはずだ。その時のオリエンテーションにて、私達凩隊とメインで嵐山隊が指導をすることになっているらしい。うわあ面倒くさい。というか嵐山隊そんなに知り合いいないしな……あ、でも嵐山隊の狙撃手佐鳥か。佐鳥なら面識あるし大丈夫かな。うーん。

「まあとにかく、一応釘刺しとくけど新入隊員たちを怖がらせないこと。お前に睨まれるの怖いんだから」
「…別に普通だと思うんですけど」
「目付きはそんな悪くないけど、なんかその冷めた目がこわ……あーごめんごめん睨まないで! その目を新入隊員に向けるなよ!」
「………」
「返事!」
「…はーい」

 なんか釈然としない…


 ▽


 まあそんなこんなで迎えた入隊式の日。訓練場に行くと、何故か荒船と東さんがいた。うわあ荒船はともかく東さん久しぶり。

「どうもお久しぶりです東さん。と荒船」
「オマケかよ」
「オマケだよ」
「はは、久しぶり、橘。遅くなったがA級昇格おめでとう。課題の機動力も大分なんとかなってたな」
「俺が隠岐紹介しましたからね」
「これみよがしに俺のおかげアピールすんな」

 まあしかし一応荒船のお陰ではあるのでお礼はいつ言っておく。なんか荒船にお礼言うのやだな……
 暫くすると佐鳥が隊員たちを連れてやってくる。こんにちは!と佐鳥の挨拶に返して、新しい隊員の子たちを見る。男の子六人、と女の子一人……あ、二人だった。小さくて見えなかった。なんか可愛い子だな。よし今回は全員で八人か。なんか少ないな。やっぱ攻撃手とかが人気なんだろうなー。凩さんちゃんとやれてんのかな……うーん。

 それから正隊員が指示を出していく形で訓練が始まった。いやーなんか懐かしいなこういうの。ちょっと制度は違ったけど私にもこんな時期があった。教えながら懐かしんでいると、ふと一番小さいあの女の子が東さんに質問しているのが聞こえ、何となしに耳を傾ける。

「撃ったあと……走らなくて良いんですか?」

 お。
 と、思わず声を上げる。隣にいた女の子の不思議そうなつぶやきであまり目立たなかったが。しかしこの子、よくそんなこと知ってるな、B級になってから習うことなのに。私なんかつい最近まで知っててもサボってたのに。隣の子は狙撃手は走らないでしょ、と馬鹿にしているがいや、走るんだなそれが。結構重要なんだよこれ。まじで。機動力甘く見てたらあとから後悔するからね。
 とまあ何を言いたいかというと、あの小さい子結構有望かもしれない。

 しばらく訓練したあと、佐鳥が銃について説明を始めた。イーグレット、ライトニング、アイビス……私イーグレットやアイビスはよく使うけどライトニングはあんまり使わないな。一発で決められないやつはちょっと敬遠しがちかもしれない。そういうのも戦術の幅を狭めてるんだろうなあとは思うがやっぱり撃ち抜くのが気持ちいいんだよな。うん。
 説明の後に、やはり実践が一番ということで女の子二人に実際に撃ってもらうことになった。まずは小さい子に、アイビスで大きな的を撃ってもらう。
 佐鳥が合図する。瞬間。

 ズドッ ボンッ

 大きな閃光と、大砲のような爆音。そして目の前には、大きく穴の開いた分厚い壁………は?

「………えー……」

 女の子が真っ青な顔で振り向いた。

「その……ご……ごめんなさい……」

 マジかよ。


 ▽


 壁を撃ち抜いた小さい女の子の名は、雨取千佳ちゃんというらしい。目の前で必死に謝るその姿は見ていてとても痛ましいが、多分これ現場監督の佐鳥の責任になるし大丈夫だと思うんだけどな。東さんの大丈夫だという言葉に倣ってとりあえず女の子の顔を上げさせる。東さんと一緒に佐鳥の責任になるから大丈夫だよと元気づけるがその子はまだ不安そうな顔をしている。東さんが聞いた情報によれば千佳ちゃんは玉狛支部の子らしい。だからトリオンについての情報がないのか。なるほど。
 少しして、騒ぎを聞きつけた開発室長の鬼怒田さんがやってきた。佐鳥が進んで罪を被り、最も正解だろう答えを出したがそんなのも関係なく鬼怒田さんに怒られていた。うわあ可哀想。
 しかしすぐに自分がやりましたと名乗りでた千佳ちゃんに対しデレデレとした反応をしていたのは気持ち悪かった。うわあ、鬼怒田さんってロリコンだったんだ。…と思っていたらどうやら娘と重ねているらしい。娘いたんだ……へえ……まあいるか……
 そして千佳ちゃんの隊の隊員?らしき男の子が二人来た。一人は眼鏡の男の子で、もう一人は白髪の小さい男の子だ。なんだか常人離れした色だな、と首を傾げる。

「ちょっと橘先輩! さっきちょっとくらい助けてくれても良かったじゃないですか!」
「うわ。だって現場監督は佐鳥だったし東さんが全部押し付けてたからいいかなーと」
「一応橘先輩が二番目の責任者だったんですからね!?」
「知らない知らない聞こえない」
「先輩!!」

 白髪の男の子からは意識が逸れてしまっていた。

入隊式でのこと

SANDGLASS