ミカ様リクエスト
「あっ! 穂村先輩! こんにちは!」
「おー。やほー太一」
学校帰り、鳩原と犬飼と共にボーダー本部に行くと、太一が嬉しそうに駆け寄ってくる。いつものことなので適当に返して、今日はちゃんと練習見てやるかと息を吐き出す。そうしたら目に見えて嬉しそうな顔をした太一が、でっかい声で「ありがとうございます!」なんて言うからちょっとだけ目立ってしまった。うるさいと頭を叩いて、鳩原も誘ってみる。どうせ鳩原も訓練室に行くんなら一緒に行ったほうがいいでしょと言ったら鳩原は頷いてついてくる。犬飼はそもそもポジション違うから誘わない。しかし何か拗ねてしまった犬飼に「おれも行くから!」と泣きつかれ、ええと露骨に嫌な顔をする。ポジション違うやつ連れて行くとなんか気まずいんだよなあ………
「………あーじゃあうちのトレーニングルーム使うか」
「え、凩隊の?」
「そ。確か今日は凩さん大学で遅くなるって言ってたし」
いつもは人を入れたりしないがまあその辺は大丈夫だろう。なんか他の人もやってるって聞いたことあるし。あと何回か二宮隊のトレーニングルーム入らしてもらったし。A級のはやっぱり色々違うわ。格差を感じたなんか。なんで給湯室なんかあるんだよ畜生。
…とまあそれはさておきとして。犬飼と太一に挟まれながら凩隊の作戦室を目指す。なんで犬飼お前太一のこと睨んでんの。なんかその顔イラつくから目潰ししたくなってくる。いや流石にやんないけど。
「あれ、名風ちゃんだ」
「……げ。犬飼先輩」
「げって酷いね」
「あ、鳩原先輩こんにちは。別役くんも」
「こ、こんにちは…」
「ちわっす!」
「ねえ凩隊ってこんなんばっか?」
いやいや、凩隊の良心凩さんが居ますとも。今不在だけど。ドンマイ。
作戦室に行くと、名風ちゃんが机に向かい宿題をしていた。犬飼を見るなり嫌そうな顔をした名風ちゃんにあれこれこうだからトレーニングルームを使いたい旨を伝えれば、「犬飼先輩をハブればいいんじゃないですかね」とバッサリ犬飼を斬った。ねえ皆私ばっかドライモンスター扱いするけど名風ちゃんもなかなかじゃないかな? 名風ちゃんの犬飼と凩さんを見る目を見て? ヤバイよ? 氷点下だよ?
しかしまあ、そんなことを言いつつ、ちゃんとトレーニングルームの準備をしてくれる名風ちゃんはやはりいい子なのだろう。私ならこのまま追い返してしまうかもしれない……いやうんやっぱり今のナシで。またドライモンスター云々うるさくなる。
「じゃあ私勉強してるんで終わったら声かけてください」
「ああうん。ありがと」
いやあ、やっぱり名風ちゃんがやると早いな。私がやってもいいけどやはりここは早い人がやったほうがいいに決まっている。なんたって、名風ちゃんはオペレーターが天職なのだから。
「鳩原も撃つ?」
「えっ、あー………うん、じゃあちょっとだけ」
「なんなら私のこと撃つ? 治したければ付き合うけど。まあ終わったあと蜂の巣にしてやるけど」
「怖いッ!! …い、いやいいや。いつもみたいに的だけ撃っとくから…」
あははと曖昧な笑みを浮かべ、トリガーを起動する鳩原。まあ別にいいけど。鳩原の実力なら人くらい撃てなくたって充分な戦力になるだろうし。とりあえず今は太一の面倒見てやろう。
▽
「…………へー、凄いじゃん」
十発中八発を的の真ん中に当てるという今までにない成果を見せた太一に、私は素直に感心してしまって、ポツリと呟いた。近くでつまらなそうに見ていた犬飼はバッとこちらを凝視して、「穂村が人褒めた!?」と驚いていた。おいこらどういう意味だ。
「穂村先輩、割と褒めてくれるんすよ!」
「………そーだっけ?」
「ハイ!」
「………このクソガキ…!」
「おい犬飼どうしたよ」
太一を呪い殺さんばかりの目で浮かべ睨みつける犬飼に首を傾げる。いや一体どうしたんだよお前今日変だよ。いや前から変だけど。
「まーでも、良くやったなー太一凄いぞー」
「!」
ポンポン、と頭を撫でてやれば、顔を真っ赤にして固まる太一。これは喜んでいる証拠だとこの数日間、よく見た反応なので知っていた。
「おっ、おれっ」
「あ?」
「おれもう一生頭洗いませんッ!」
「何言ってんだお前」
きたねーよ何言ってんだよ馬鹿なのか。いや馬鹿なのは知ってたけど。不衛生なやつを弟子にはしたくないよ私。困惑していれば犬飼が何やら騒ぎ出した。今度は何だ。
「ズルい!! おれも撫でてよ!」
「え。やだよ」
「なんで!!」
「なんでもやだよなんかやだよ……なんでお前の頭なんか撫でなきゃいけないの…」
「おれの頭はバイキンですか!?」
いやそこまでは言ってないけどさ。犬飼に珍しく圧されていれば、鳩原までなんだか少し羨ましそうな目で見てきている。ええ………なになんだよお前もかよ。
「穂村先輩! 撫でちゃだめですよ絶対!」
「はあ?」
「撫でてよ!」
「うるせえ黙れ」
「辛辣!!」
ぎゃあぎゃあとやかましい二人に溜息を吐き出して、ちらりと鳩原に目を向ける。やっぱりなんかやってほしそう。
「(……………うーむ、わからん)」
なんだか色々めんどくさくなって、とりあえず外の名風ちゃんに助けを求めた。何かを察知したらしい名風ちゃんに無視された。悲しい。
太一の頭を撫でてみた