ぷー様リクエスト

※二宮さん若干キャラ崩壊気味※


「橘穂村。俺と付き合え」
「え、嫌です」

 つい咄嗟にそう答えて、しかしすぐにん?と首を傾げ、改めて告白らしきものをしてきた相手を見やる。…間違いない二宮さんだ。二宮隊隊長でうちの凩さんの友達じゃなく幼馴染だと天然発言かましよったあの二宮さんだ。一体何事だと二宮さんを凝視して、「え、なんですかどうしたんですか」と思わず心配してしまう。
 
「言葉のとおりだ。お前が好きだ。付き合え」
「え、だから嫌ですって」
「………」

 いやそんな睨まれましても。本当に二宮さん一体どうしたんだ。ああもしかして太刀川さんとかと罰ゲームでもやってんのか………いやでも二宮さんがそんな馬鹿なことに参加するだろうか……いやでもなあ。
 二宮さんは相変わらずジッとこちらを睨んでくる。ううん、困った。どうすれば。

「……とりあえず」
「なんだ」
「二宮さんタイプじゃないんで。スミマセン」
「………」

 そう言って軽く会釈をしてから、二宮さんから逃げた。タイプ云々はあまりないけどまああそこまで言ってしまえば流石に言って来なくなるだろう。うん。

「………」

 二宮さんが走り去る私をジッと見つめ、何か思案していたことなど、私は知らない。


 ▽


「お前のタイプを教えろ」
「…………」

 次の日、ラウンジにて。適当に空いているところに座り、この間買ったばかりの小説を読んでいれば、当然のように私の目の前に座り二宮さんがそう言ってきた。思わず絶句してしまった私は悪くない。いや本当に二宮さんどうしたんだ怖いんだけど。

「…………あの二宮さん」
「なんだ」
「先日二宮さんは全く全然これっぽっちも私のタイプじゃないとお伝えしたはずなんですが」
「ああそうだな」
「ならなんで」
「好きな奴のタイプを聞いて何が悪い」
「いやだから」
「努力する。だから教えてくれないか」
「…………」

 くそこのイケメン野郎………話が通じないどうしよう………タイプじゃないって言って駄目ならどうすれば。ああそうだ二宮さんと真逆のタイプを言えばいいのでは。いくら二宮さんだって私のために性格をガラリと変えるなんてできるわけがない。
 ええと、二宮さんと正反対といえば……

「………凩さんみたいな人がタイプです」
「………凩……?」

 眉間にシワを寄せる二宮さん。そうだ凩さん。流石にあのヘタレイケメンみたいになるのは無理だろう。うん。

「………分かった」
「……え」

 ……分かった≠ニは。

 首を傾げていたが、その次の日、その返事の意味を理解した。

「おはよう、橘」
「………」

 言葉を失う。
 二宮さんが物凄い爽やかな笑顔で挨拶をしてきた。その笑顔は凩さんにそっくりだ。流石は幼馴染……だとか言っている場合ではない。やべえこの人本気だ。

「あ、あーやっぱり凩さんじゃなくて犬飼みたいな人がタイプです私。ハイ」
「…、犬飼?」
「はい、だからちょっと二宮さんは…」

 今度は、とあのコミュ力野郎の名前を提示してみる。二宮さんは凩さんの名前が出た時よりも難しい顔をして、何やら考え込んでいる。割とコミュ症気味な二宮さんには犬飼のようになるのは無理だろう。コミュ力なんて一朝一夕で身につくものではない。

 …が。

「……ねえ穂村さ」
「なに?」
「なんか昨日さ、二宮さんが穂村のとこ行ってくるって言って帰ってきて即行俺に上手い話し方を教えてくれ≠チて頭下げてきたんだけど。なんか知ってる?」
「……」

 まじかよあの人。
 机に肘をついてまた絶句する。え、何なんだあの人本当に。何で私を口説き落とすのにそんな躍起になってるんだいや本当に。いや無理……押すのも苦手だけど押されるのも苦手なんだよ私……いやほんと…
 とりあえず本当に諦めてもらわねば。今は恋愛なんかしている気分じゃない。

 それから、私は二宮さんに諦めてもらうべく、色々なタイプの人を挙げていった。例えば出水だとか(その日のうちに出水に頭を下げに行ったらしい)、米屋だとか(前髪をカチューシャで止めてきた。死ぬほど似合わなかった)、太刀川さんだとか(ヒゲを生やすから勘弁してくれと言われた)、ちらりと見かけたことのある筋肉がすごい人を思い出して筋肉がすごい人と言ったり(犬飼情報により物凄い筋トレをしている大変だ止めてくれと泣きつかれた)、まあ色々と言っていった。
 しあしまあ、二宮さんも諦めない。終いには次は誰だと聞いてくる。モノマネ大会じゃないんですよ二宮さん…

「いやあの、本当に無理なんで。諦めてくださいほんと無理です」

 ブンブンと首を横に振って、とりあえず無理だと全力で否定する。いや本当にね……今回のことで二宮さんてマジの天然だと思い知ったわけですよ。だめなんだよ私天然とは向き合えないんだよ本当に………うん…………どうしたらいいか分かんなくなるんだよ……天然ホントに無理だ……

「……橘」
「あーもう分かりました。ハイ。背の低い人が好きです。風間さんくらいがちょうどいいです。だから二宮さんは無理です諦めてください」
「…………背の低いやつ」
「ハイソウデスネ二宮さんと正反対ですね!」

 身体的なものはどうにもならないだろう。流石に諦めるに違いない。二宮さんは少し考えた後、踵を返しどこかへ行ってしまった。…諦めた? のか?

「…………はあ、長かった」

 これでまた平穏な日常が戻ってくる。


 ……と、本当にそう思っていたのに。

「橘」
「…………」

 目の前に、160cmくらいの男の子。完全にサイズ感が違うが、二宮さんだ。どう見たってこれは二宮さんだ。

「トリオン体で作ってきた」
「………」
「お前が望むなら、俺はずっとトリオン体でいても構わない」
「………」

 ギュ、と手を掴まれる。

「俺と付き合ってくれ」

「あ、いやほんと無理です。そこまでされると気持ち悪い」

 当分、平穏な日常なんて戻ってきそうにない。

二宮さんに口説かれる

SANDGLASS