「凩はいるか」
「………え」
「凩啓太はいるかと聞いている」

 唐突にウチの作戦室に入ってきたかと思えばこの傍若無人ぶりを発揮するのはご存知二宮匡貴さんである。ビビる。というか本当にこの人は去年まで高校生だったのだろうか。なんというか、凩さんにはない妙な威圧感があるというか。とりあえず怖い。苦手だ。
 若干ビビりつつも凩さんも名風ちゃんも不在で現在私一人という状態だったのでいませんと正直に答える。二人共学校がまだ終わらないようでまだ来ていない。普通校の名風ちゃん、大学一年の凩さんと進学校組の私とだと大体向こうのほうが早く終わるのだが、今日はどうやら逆だったようだ。そして最近知った一番の衝撃事実。二宮さんが去年まで同じ高校だった。ビビる。とりあえず二宮さんのことに関しては一通りビビる。ついでに犬飼の誕生日を忘れるなんてこともあったが大したことではないので割愛しておく。犬飼には泣いて怒られたけど。気にしない。
 二宮さんはその答えに「そうか、」と少し考える素振りを見せてから、「では少し待たせてもらう」となぜそんな結論に至ったのか分からないがそう言って作戦を練るために置かれた椅子の一つにドカリと座った。えー、と小さく呟きつつもその若干の戸惑いすら二宮さんに届く様子はない。どうすればいいんだこれは。とりあえずお茶を淹れればいいのか。しかしB級の作戦室に給湯室などない。どうすれば。…あ、そういえば冷蔵庫の中に(凩さん持参)わらび餅と市販のお茶があった気がする。よしそれ出そう。わらび餅って凩さんの好物だった気がするけど。

「どうぞ」
「、ああ、すまない」

 そー、と二宮さんの目の前にお茶とわらび餅を出せば小さく会釈をされた。私も小さくそれに返す。さてどうしよう。と思っていればわらび餅は返されて、「わらび餅はいい。凩のものだろう」と言われた。流石幼馴染。よく知ってらっしゃる。聞けば一度凩さんのわらび餅を食べてキレられたことがあるらしい。ヘタレで滅多に怒らない凩さんがキレるとか余程のことなのか。一応気をつけとこう。普段怒らない人がキレたらヤバイって言うし。

「………」
「………」

 …やっべ会話ない。気まずい。早くどっちか来ておくれ。気まずいよー。いや名風ちゃんが来てもコミュ力ないやつ同士で更に気まずいので凩さん早く来てくれー。こんなにあんたを必要としたのは初めてかもしれない。泣かないでごめん。

「……東隊を解散するかもしれない」
「……は?」

 あまりの気まずさに若干の苛立ちを覚え始めていた頃、不意に二宮さんがそう口を開いた。唐突な内容に思わずは?なんて言ってしまったが二宮さんは気にすることもなく続けた。

「そうなれば、俺は自分の隊を作ろうと思う」
「……はあ。そうですか」
「それに、凩も入れたいと思っている」
「、」

 目を瞬かせる。凩さんを入れたい? いやそれはまあ、別に構わないけど。勿論、思う分には。

「凩は実力者だ。だが隊長向きじゃない。今の凩が隊長のままのこの隊ではとてもじゃないがA級は目指せない」
「………」

 まー、一理ある。つい納得してしまった自分がいることを少し情けなく思いながらも、凩隊がなくなることを嫌だと思う自分もいる事に少し驚く。結構この隊を気に入っているようだ、私も。
 何も言わない私が気分を害したと思ったのか、二宮さんが私に声を掛けてくる。

「気分を害したのならすまない。悪意はない」
「イエイエー。自己評価はそんなに悪くないもんで」
「………そうか」

 まあ決めるのは凩さんだと内心で納得しようとしていれば、丁度凩さんがいらっしゃった。私は席を外そうと部屋を出てこうとする。すると二宮さんに呼び止められた。

「そういえば名前を聞いていなかったな」
「私ですか」
「他に誰がいる」
「ですよねー。橘穂村です」

 名乗って、今度こそ部屋を出た。凩さん、断ってくれるといいけども。

二宮さんとふたり

SANDGLASS