「えっ、次のランク戦の日任務入ってるんですか」
「うんそうだけど……どうかした?」
「あーくっそ荒船のやられる姿見て笑ってやろうと思ってたのにー」
そう呟いて悔しがると、凩さんが苦笑した。やられる前提なんだね、と言われて初めて確かにそうだと気付いた。いや多分若干あの会見から三雲隊贔屓な感じだからそのせいだとは思うんだけど。でもまあ荒船隊強いしな。荒船が勝つところ見るのもなんか癪だし別にいいか。…いやでも三雲隊がどんな戦術で来るとか気になる……だって荒船隊と諏訪隊相手なら戦術で攻めるしかないだろうし。千佳ちゃんの大砲は強力だけど一発撃ったら簡単に補足出来ちゃうしな……あーやっぱり見たかった。くそ、なんでその日任務が入ってるんだ。しかも後で武富ちゃんから聞いた情報によると次の解説は東さんらしい。くっそ。見たい。聞きたい。最悪試合のログは後で見れるけど解説は生じゃなきゃ聞けないんだよな。あーほんとツイてない…
「あーーーくそー」
「なんや荒れてますねえ、穂村さん」
「あ? …って隠岐じゃん。やっほう久しぶり」
「どうも〜」
狙撃手の合同訓練でヤケクソに叫びながら弾を撃っていると、隠岐が近くに寄ってきた。叫ぶのと撃つのをやめて手を上げると、ニコリと笑って近づいてきた。よく見ると私の周りに人がいない。どうやら遠巻きにされてしまっているようだ。…しまった奇行に走りすぎた。
「どないしたんです?」
「いやー今度のB級ランク戦でさあ」
ムシャクシャする理由を簡単に隠岐に話すと、あ〜、と納得したように苦笑された。しょうがないですね、と返されて、まあそうだよな、と頷く。うんまあ誰かが任務に就かないとだしな……うん。
「というか穂村さん」
「んー?」
「もう師弟関係やないですけどもうちぃと俺に構ってくださいよ。用が済んだらすぐポイですか」
「やめろよ人聞き悪いな……ごめんけど単純に会わなかっただけじゃんか。あ、イコさんたち元気?」
「元気です。…A級に上がった報告も俺後回しやし」
「ごめんってば」
しつこいな、と隠岐を見るが笑っているので多分本気で怒ってはいないのだと思う。あれだコミュニケーションってやつだ。年下とのコミュニケーションって大事だよねーうん。そういえば最近ちゃんと辻くんを構ってやってないな。今度うざ絡みしに行こうよしそうしよう。
「今度は俺が穂村さんに弟子入りしましょうかね」
「えーやめてよ太一弟子にするのも大分渋ったのに。一人だけで手一杯、面倒だからいらない。っていうか私じゃ力不足だし」
「そんなことないと思いますけど。…でも渋った上で最終的にOKしたってことですよね? なら粘れば俺もいけるんやないかなあって」
「アホやめろ。もう絶対弟子なんか取らない。それに隠岐上手いじゃんうん」
「とってつけたように。でもありがとうございます」
弟子入りは冗談ですよ、と笑う隠岐に眉を寄せる。この野郎。遊びやがったな私で。
「あ、イコさんとマリオがまた遊びに来てーなーって言ってましたよ」
「マジかそれは行かなきゃな」
ちょっと憎たらしいけど嫌いになれないのは天性の才能か何かだろうか。
▽
B級ランク戦の日、凩さんと指定地に就くと、そこに太刀川隊も一緒にいた。穂村さん!とすぐに寄ってくる出水と凩さんの名前を呼んで凩さんの方にすぐに行った太刀川さんがちょっと似ているなと思った。ちょっと離れたところにボンがいた。ようと手を上げると「ヒィ!?」と悲鳴を上げて怖がられてしまった。うーんあれからずっと怖がられている……そんなにあれ怖かったかな……
「凩隊との合同任務だったんすねー」
「あーうんそうみたいだね」
「なんか穂村さんと話すの久しぶりっすね。大規模侵攻の時も会わなかったし」
「あっちこっちうろうろしてたんだけどね」
出水と話しながら、定位置に就く。太刀川隊と一緒なら今回の任務は割りかし楽そうだ。というか太刀川隊だけで十分だろうから私ランク戦見に行っちゃダメかな……ダメか。うんだよね。
度々出てくる近界民を相手にしながら、ポツリとランク戦行きたかったなーと愚痴をこぼした。太刀川さんにその声を拾われて「ああ東さんの解説らしいしな」と話しかけられた。少し驚きながらも「ああ、そうですね。正直めっちゃ聞きたいですけどしょうがないですもんね」と返した。太刀川さんは少し考えて、「…よし分かった、任せろ」と返してきた。…いや、任せろってなんだ。言葉のキャッチボールをしてください。
私は太刀川さんがちょっと苦手だ。初めて会ったのが太刀川隊と凩隊とで模擬戦をした時で、そこで真っ二つに切られたから、というのもあるのだが、まあ当然それだけではない。それだけなら私は荒船や村上のことも苦手ということになる。荒船はムカつくが村上は普通に良いやつだし、二人とも嫌いじゃないし苦手でもない。太刀川さんを苦手な理由は、何を考えているかよく分からないその感じだ。学力的には馬鹿で攻撃手としては個人も総合も一位、典型的な体力馬鹿のように思えるのに、たまに妙に鋭いというか、狙撃手としてはとても狙い難くて苦手だ。あの試合も、最初は太刀川さんを先に落としてやろうと思ってたのにあまりの狙いにくさに出水にターゲットを変更してしまった。腹が立つ。その他諸々理由はあるが、それから私は太刀川さんが苦手だった。
結局その日は「任せろ」の意味が分からないまま任務を終えた。まあ別にそんなに気になることではないけど。
と、思っていると、それからすこしたって、太刀川さんに廊下で話し掛けられた。
「なんですか?」
「これ、貸してやろうと思って」
「? なんですかこれ」
「この前のランク戦のログ。東さんの解説音声入り」
「えっ」
驚いてそれを見つめる。どうやって、と聞くと「企業秘密だ」とドヤ顔をされた。イラッとしたが我慢して、お礼を言ってそれを受け取った。
「お礼はきなこ餅でいいぞ」
「えっお礼取るんですか……っていうかきなこ餅は本部から禁止令出てるんで無理です」
「えー」
「えーと言われても」
結局普通の餅で妥協すると言われた。いや、私が餅をあげる前提なのはなんでだ。
解説を聞きたい