「…おおお…」

 作戦室にて、太刀川さんから貸してもらった映像を凩さんと名風ちゃんと共に鑑賞していた。やっぱり千佳ちゃんの大砲は凄い威力だ。射線なんて関係なく撃てるところは本当に羨ましい。そして三雲隊の作戦には感服した。敢えて狙撃手有利の地形を選んで荒船隊を有利にして諏訪隊と利害を一致させるとか、私には考えつかない。これを考えたのは三雲くんだろうか。戦闘力はまだまだだけど、戦術を考える頭はピカイチだな。戦局を動かすのが上手い。そして何よりも空閑くんだ。荒船を倒したぞこの子。グラスホッパーのフェイントを仕掛けて脚をちょん切ったところは思わずよし!と叫んでしまった。こら!と凩さんに怒られたが知らない。だって弧月まで抜いて負けたんだいつもやられていた身としてはざまあみろって感じだ。まさか本当に荒船の倒される姿を見れるとは思わなかった。いやしかし最後トリオン切れで緊急脱出する前に千佳ちゃんを落としにかかったのはムカついたが流石だなと思った。あの場面なら私もそうする。浮いたコマは落としていかなければ。結局その試合は玉狛が最後に空閑くんを囮にして三雲くんが諏訪さんを落として、六対二対一で最終的に三雲隊の勝利として終わった。いやでもやっぱり東さんの解説は分かりやすいな。経験の差ってやつ? 弟子として誇らしいですな、うん。
 と、感心して頷きつつも、少し気になることがあって、うーん、と唸った。気になること、っていうか、あれだ、既視感?っていうか。

「? どうした?」
「うーん……いや……なんか、千佳ちゃんが……うーーん…? いや気のせいかな…」
「え、なんだよ?」
「……うーん……いや、やっぱり気のせいですね」

 そう勝手に納得して頷くと、凩さんが「えええなんだよ気になるだろー!」と文句を言ってきたが知らない。だって多分気のせいなんだ。あまり、そうであって欲しくない。杞憂ならそれでいい。

「(多分気にしすぎだな、うん)」


 ▽


 それからしばらくして、三雲隊と鈴鳴第一、そして那須隊でのランク戦が行われた。その試合の解説は太刀川さんと迅さんで、進行は三上ちゃんで行われた。その日は生で見ていたのだが、なんというか太刀川さんが解説とかできるのが意外でしょうがなかった。太刀川さんのイメージって凩さんから聞かされてた馬鹿ってイメージしかなかったから意外だった。
 その日のランク戦を、私は出水に引っ張られて何やらVIPルームみたいなところで鑑賞していた。何ここすごい、と呟くと出水が「そうですか?」と得意げな顔をしていた。何だお前まさかいっつもこんなとこでランク戦見てるわけじゃないだろうな。その部屋には何故か二宮さんもいた。うわあ、と少し眉を寄せてしまった私は悪くない。だって最近二宮さんちょっと冷たいからな……あの凩さんの家での一件以来。ドライモンスター連呼するのやめて欲しいからあんまり関わりたくないんだけど。

「…どうも」
「…ああ」
「? 二人仲悪いんすか? そんなことなかったですよね…? あれ?」
「あーうんうんそんなことないよ。ほら出水早くランク戦を見よう」
「あ、はい」

 出水を引っ張って、二宮さんから少し離れたところに座る。よし、ここなら試合もよく見える。
 今回の試合は一番順位の低い那須隊にステージの選択権があった。那須隊が選んだのは河川敷で、天候を暴風雨に設定した変則ステージだった。これは完全にエースとそれ以外を分断するのが目的だろう。那須隊、どうやら今回かなり気合いが入っているようだ。しかし那須隊の目論見は上手くは行かず、熊谷ちゃんと日浦ちゃんが橋を渡って那須さんに合流する前に千佳ちゃんの大砲で橋を崩されてしまった。三雲くんの指示のようだが、思い切ったことをしたものだ。まだ空閑くんも橋の反対側にいるのに。それから日浦ちゃん、熊谷ちゃんと順に空閑くんと村上に落とされ、空閑くんと村上の一騎打ちでは最終的に水中戦に持ち込んだ空閑くんが勝って終わった。
 河川敷の反対側では那須さんが一人で来馬さん、太一、三雲くん、千佳ちゃんを相手にしていた。真っ先に落とされたのは太一だ。おいこら太一、何簡単に落とされてるんだよ。隊長を真っ先に守るのは良い判断だけどさ……軽率な行動も控えるよう教えるべきだろうかまったく。次にやられたのは来馬さんだった。しかし来馬さんもただではやられておらず、最後に放った攻撃で那須さんに大ダメージを負わせていた。最後に三雲くんが千佳ちゃんを逃がしたうえで那須さんを取りに行ったが返り討ちに合い、落とされた。最終的に川から這い上がった空閑くんが那須さんの元に辿り着いたものの、那須さんは来馬さんの与えたダメージによるトリオン切れで緊急脱出した。三雲隊は生存点も加わり、四対三対二で勝利した。
 おお、と感心しながら太刀川さんと迅さんの解説を聞き、しばらくぼーっとしていると、出水と二宮さんが何か話していた。今回の試合を見て三雲隊の批評をしているようだ。二宮さんの三雲隊に対する意見はかなり辛口だった。うわあ、と苦笑していると、ふと二宮さんの言った言葉に、固まった。

「あのちび大砲は……人が撃てない」

 …ああ、やっぱりか。

人が撃てない子

SANDGLASS