やる気もないけどやめる気もない

「………お前すげぇな」

 バレー部の先輩との対面後、夜久が驚いたようにそう言った。私にマネージャーの仕事を教えるようにと先輩に頼まれた夜久は、部室へ案内してくれているところだった。私はそんな夜久にヘラリと笑って「でしょー、もっと褒めていいんだよー」と調子に乗ってみる。夜久は苦い顔をして「これは褒めざるを得ない」と、低く唸った。そんな顔するほど褒めたくないかい、夜久くんやい。
 先ほど夜久に連れられバレー部へと連れて来られた私は、早速夜久曰く「ウザい先輩」に絡まれた。「何だよマネージャーならもっと可愛い子連れてこいよ」「使えねぇなあお前」私にも夜久にも失礼なその言葉に、夜久は憤慨して怒ろうとしたけど、私が止めていつもの笑顔を先輩達に向けた。

『あはは、そんなこと言わないでくださいよ、先輩。可愛くないですけど、仕事はちゃんとやりますから』

 私の中学では必ず部活に入部しなければならないという面倒くさい制度があったため、私は友達に連れられてテニス部に入部した。バレー部の先輩たちは、その時のテニス部の先輩たちにそっくりだった。まあテニス部の先輩は女だったけど。だけどまあ、本質が似ているので対応の仕方なら染み付いていた。中学の頃も、キレそうな友達に代わって対応していたら凄いねと感心された。ドヤァ、とドヤ顔を見せたらウザいと言われたけど。酷い。

「うーん、いやしかしあと二年我慢しなきゃ行けないのかあ。辛いねぇ」
「……そうだな」
「でもやっくんとなら頑張れる気がするよ」

 どこぞの少女漫画から拾ってきた台詞を披露してみれば、夜久は真っ赤になって「アホか!」と怒鳴ってきた。え、冗談だよやっくん純情だなあ。私より女子力高くない? あれか、私に足りない女子力は恥じらいというやつなのか。うん? ほとんど足りてない? 失礼な。知ってるけど。
そうしてふざけていると、夜久が急に真面目な顔をして立ち止まった。

「……ほんとに、無理してないか?」
「うん?」
「嫌だったら辞めていいからな」
「やっくんしつこい」
「は!?」
「しつこい男は嫌われるぞー」
「しつこ……ってお前な!!」
「辞める気ないって言ったじゃん」

 そう言った後に、何だか照れ臭くなって「やる気もないけどねー」とこの間言ったことを繰り返すと、夜久は「…だからなんだよそれ」と破顔した。

「さー早く仕事教えてよ。なるべく動かないで済む方法で!」
「んな方法ねぇよ!」

 バシッと叩かれて、漸くいつもの夜久に戻ったと息を吐いた。

SANDGLASS