さて、入学式挨拶、やりきりました。腰は入学式ホント直前に夜久に回し蹴りされたら治りました。痛かった。…でまぁ、先生に貰った紙を読んだだけの挨拶でありましたが、無事終了致しました。終わってから夜久に「お前やれば出来るんだな」と言われたので調子に乗ったらまた回し蹴りされた。ちょ、また腰再発したらどうしてくれる。
…で、まぁ何故か夜久と行動を共にしているのだが、女子と男子一緒に行動してるせいか視線が痛い。主に女子の。あれですね、噂好きの女の子達の性ですかね。彼女らの中で、今私達の関係はかなり進んだものになっている事だろう。あちらの世界の友人もよくそんな感じに男女間の関係を噂したりしていた。
「そういえばさー、」
「何」
「やっくんの声って慎ちゃんの声に似てる」
「誰だよしんちゃんって」
出会った時からずっと思っていた。夜久の声は慎ちゃんに似ている。というか同じだ。私的にはほそやんが一番好きなのだが、声優さんなら結構皆好きだ。俳優さんに特に興味も湧かなくて、友人に勧められるままに聞いた声優さんの声。珍しく何かにハマった瞬間だった。
後どうやらこの世界に私の知ってる声優さんはいないようだ。ほそやんを調べてみたがヒットしなかった。いやまあ私の携帯に大量にほそやんやその他諸々の声が録音されているから別に良いのだけど。
「うーん慎ちゃんの声が生で聞けるとは…」
「だから誰だよ慎ちゃん」
まあこちらにはいない人の事を知らないと言われても無理はない。とりあえず居ない人の事を説明するのはアレなので知人だよとだけ答えておいた。
それから学級開きをして、一年生は解散となった。私は夜久以外に知り合いもいないので、一人で帰ろうとすると前の席の子に話しかけられた。可愛らしいまさに女の子って感じの子だ。適当にへらりと返していれば、何かちょいちょい女の子が話しかけてきた。
何だろう昔から黙ってても話しかけられるんだよな。友達作るの楽でいいけど。
「ねぇさっき男の子といたけど仲良いの?」
「んー、会ったの今日だし分かんない」
「えっ、今日!? すっごい仲良さ気だったのに」
「私幼馴染とかかと思ったー」
…ほう。幼馴染か。何か付き合いがかなり長くなってるな。今日のほんの数時間だけの付き合いなのに。恐らくは私の態度の問題だろうが、それにしても、夜久も私に遠慮無く蹴りとか入れ過ぎだと思う。普通会ったばっかの、しかも女子に蹴りを三発も入れないと思うんですよね。
「結構かっこ良くなかった?」
「えー、でも背低くなかった?」
「可愛くない? 葉月ちゃんと同じくらいだったよね」
「あー可愛いよねやっくん」
「やっくん?」
「彼の名前は夜久衛輔です」
「へー」
夜久の事で盛り上がる女子に「早く帰りたいなぁ」なんて場違いなことを考えていれば、女の子の一人が「隣のクラスの?黒尾君?って格好いいらしいよ!」と今度は違う男子の名前を提示して来た。背が高くて格好いいらしい。別段興味も湧かない。
「あれ、葉月ちゃんは興味ない?」
「んー、まぁ」
「夜久君みたいな人がいいんだね」
「うん…………うん?」
…何でそれに行き着いたのかよく分からないが、この年の女の子は皆色恋に繋げたがるらしい。私はそれに息を吐きだし、今度こそ別れを告げて教室を出た。
すると誰かとぶつかった。
「あぁ悪い」
「、……いえ」
…ゆうきゃんだ。
ぶつかったその人の声は、ゆうきゃんの声にそっくりだった。私はそれに驚きつつも首をひねって足を進めた。