異世界での思い出作り

 さてさて、入学式から一ヶ月ほどが経ちました。一向に帰れる兆しがありません。ちょっと辛い。いやしかし結構楽しく生活してたりする。友達っていうか周りできゃいきゃい話してくる女の子達がいるからぼっちではないし、勉強もまぁそれなりに出来ている。だが来週の中間テストで、入学式の時に何故か首席に設定されていた程の実力は発揮出来ないと思う。別に頭悪いわけじゃないけど一位取れるほど良いかって言われたらそうでもないからね! …でまぁ、異世界での高校生活をそれなりにエンジョイしてるわけですが、これマジで帰れるのかな。いやまだ一ヶ月しか絶ってないけど。されど一ヶ月だ。こっからグングン先延ばしにされて結局帰れないとかは勘弁してほしい。一応前の世界に未練はある。

「かーえりたいなぁ」
「登校しながら何言ってんだよ」
「、おー夜久おはよー」
「はよ。……今日も怠そうだな」
「んー、怠いねぇ」

 朝、夜久が話しかけてきた。帰りたいってそういう意味ではないのだが、まぁいいや。
 何だかんだで一番仲が良いのは夜久だと思う。クラスメイトや他のクラスの子に『付き合ってるの?』と聞かれるのもしばしばだ。男女が仲良くしてるだけで恋人≠ニいう考えに至るのは安直ではないかと思うが、まぁ高校生だしな、とも思う。いや同い年だけど。
 そのまま一緒に登校する。

「…なぁ、崎岡」
「んー、何?」
「テスト終わったらさ、バレー部のマネージャーとかやんねーか?」
「、」

 …バレー部。そういえば夜久はバレー部だっけ。背の低い子がバレーをやるのが意外だったのでその辺は覚えている。…バレーかぁ、やる分には痛くて嫌いだけど、見る分にはワクワクするよなぁ。兄貴がバレー好きでテレビとかでよく見てたけど、ついつい見入ってしまうことが多々あった。…マネージャーねぇ、うーん、

「いいよー」
「…え」
「夜久が誘ったのに何驚いてんの」
「いや絶対断られると……」
「つまり冗談?」
「いや本気」

 じゃあ良いじゃないか。…まぁ前の世界とかなら断ってたかもしれないけど、この世界でやるならいいか、ってちょっと思った。

「……どーせ最期までいれるか分かんないんだし」

「…? なんか言ったか?」
「んーいや何でもー」

 思い出くらい、作っておきたいなって思っただけ。

SANDGLASS