俺は空木と、まぁまぁ仲がいい方だと思う。
とはいえ、まぁ及川とか岩泉とかには敵わないけど、友人の少ない彼女からすれば、俺はしっかり友人≠ノカテゴリーされる立ち位置にいるだろう。俺が空木と初めて会ったのは、ご存知の通りあいつが岩泉に連れて来られた時だ。当初、今では考えられないくらいここに馴染めていなかった彼女を及川はあまり良く思っていなかったようだが、俺は特に何の感情も抱いていなかった。ただ、当時俺ら一年がやっていた雑用をやらなくて済む、と少しラッキー、とくらい。それから思わずフォローしてしまうくらい彼女の下手くそなレシーブを見て、暫くして及川と空木が仲良くなって。俺はそれに混ざるようにして、彼女と仲良くなっていったのだ。
そんな彼女が、最近恋をしたようだ。相手は最近入ってきた一年の、国見英。及川と岩泉の後輩であるらしい。彼女が及川のファンに殴られそうになっていた所を助けていた。俺も行こうとしたのだけど、まぁ当然間に合わなかった。
いつも済まし顔で及川に毒を吐いている彼女らしくなく、国見の前ではあたふたとどもっているのだから、違和感しかない。俺は彼女の無表情と済まし顔と、怒った顔、呆れた顔、あとはたまに笑顔とか。あんな慌てたような、照れたような、まるで恋する乙女のような顔は、見たことがなかった。まるでっていうか、そうなのだろうけども。
そういえば、どうやら空木と国見は最近付き合い始めたらしい。まだ国見と会ってそんなに経っていないだろうに、あっと言う間にくっついてしまった二人は部活でも無意識だろうがいちゃついている。独り身としては、中々苛つくものがある。
「おーい、はーなーまーきー?」
「っ、あれ、何やってンの、空木」
「あのねぇ、聞いてなかったなやっぱり」
そういつの間にいたのか、目の前で呆れ顔をする空木。俺はもう一度彼女に用件を聞き返しながら、頬杖をついた。用件は別に大したことではなくて、適当に相槌を打っておいた。空木はそれが気に入らなかったのか、「分かってんの? ちゃんと」なんて俺の顔を覗き込んできた。…一々距離感が近いんだよな。恐らく俺が男として見られていない証だろうけど。こいつはきっと国見以外、男として認識していないのだ。そう冗談のように考えつつ、肩を竦めて「分かってる分かってる」と頷いた。
「つーかさァ、お前部活でいちゃつくのヤメてくんない? 独り身としては辛いんだケド」
「いっ、いちゃついてなんか、ないしっ、」
「これだから無意識バカップルは」
「何それ初めて聞いた」
俺も初めて言った。真面目な彼女の反応に笑っていれば、「空木先輩」と国見の声。扉の方を見れば何故か国見がいて、空木は驚きながらも嬉しそうに国見の名前を呼んだ。
「どうしたの?」
「お昼、一緒に食べようと思って教室行ったら岩泉先輩がここだって」
少し、多分国見も無意識だろうが睨まれて、噴き出しそうになるのを堪えた。一丁前に嫉妬なんかしちゃってサ。
「(ホント、お似合いだな)」
並ぶ二人を見て、そう思った。
他人の幸せは蜜の味
(なーんて、)
(絶対本人には言ってやんない)
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SANDGLASS