「大丈夫ですか?」
「っ、」
私は、声が出なくてただコクコクと頷いた。するとその子はそうですか、と言って、少し笑った。それにドキリとして、思わず顔を伏せた。あぁ、ヤバイな。ドキドキするよ。その感情に困惑していれば、後ろから及川の、焦ったような、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。私はそれにより我に返って、振り返り、駆け寄ってきた及川の名前を呼ぶ。「大丈夫!?」といつになく焦っている及川に、私は五月蝿いと一括して、助けてくれた子にありがとう、と、少しどもりつつお礼を言った。あれ、おかしいな、なんか上手く言えないや。どうしたんだろ、私。首を傾げていると、助けてくれた子が、相手の掴んでいた腕を放した。女の子達は我に返ったように、私を睨みつける。それを牽制したのは及川だった。私は及川を見上げた。いつになく、真剣な顔。珍しく格好いいな、なんて思いつつもやっぱりいつもの方が及川らしいよな、なんて考える。
「この子は俺の大事な友達だからさ。それにマネージャー頼んだのも、俺だし。あんま手出さないでよ」
「お、及川君。でも、」
「言っても分かんない子は嫌いだよ?」
ニコリと、及川は笑った。その笑顔が、いつもの及川の笑顔じゃなくて、少し驚いた。それにしても、友達か。間違ってはないけど、及川も普段あんな扱い受けてるくせに、よくもまぁ、堂々と友達と名乗れたものだ。いや、間違ってはないのだけど。自信家なだけはある。普通はあんな扱い受けてたら、嫌われてるんじゃないかとか考えるだろうに。まぁ、そんな所があの扱いに拍車をかけているのだが、その辺は黙っておこうか。
女の子達は及川にビビって出て行った。まぁ助けられたっちゃ助けられたので、ありがとうとお礼を言った。すると及川はかなり驚いた顔をして、「雨が降る!?」なんて騒ぎ出したのでとりあえず蹴りを入れておいた。失礼な、人が素直にお礼を言ったというのに。というか、バレーは室内スポーツだから雨が降ったところで支障はきたさないし、関係ないだろう。もう二度と言わない、とごめんと謝る及川に言ってから、未だ入り口に立っている子に気付いた。というか、よく見たら二人いた。さっきの助けてくれた子と、もう一人、ラッキョみたいな頭をした背の高い子。おぉ、ほんとに高いな。つかデカいな。
私が二人に視線を向けると、及川が思い出したように二人の方を向き、「国見ちゃん、金田一久しぶりだねー!」なんて片手を上げた。知り合いか、というか、もしかしてさっき言ってた及川と岩泉の後輩か。
「………おいこらクソ川。顔合わせ」
「いぃい痛い痛いよ佑ちゃん、かか髪引っ張らないでっ!」
とりあえず、一年の子には中に入ってもらい、顔合わせをする事になった。
―――――――…
「国見英です」
背の高い子――金田一君というらしい――の自己紹介も終え、先ほど助けてくれた子の名前も明らかになった。国見英君、か。私は頭の中で反響して、ドキドキする心臓を抑えた。あぁ、やっぱり何か、変だ。ドキドキする。新入生の自己紹介も一通り終え、二年、三年と自己紹介をしていく中、私はそれを聞き流し、ぼんやりと、国見君に視線を向ける。…あぁ、気持ち悪いな、私。そう思って視線を背けるが、やはりつい、見てしまう。何か、綺麗な顔してるな、国見君。いつも及川を見てるからあれだけど、及川よりタイプの顔かもしれない。まぁ、別に及川の顔が好きなわけではいなのだけど。及川はまぁ、一般的に言って格好いいの部類に入るのだろう。国見君も、格好いい、の部類に入るだろうが、私はまぁ、国見君の方がタイプだ、という話で。いや別に、誰に言ってるわけではないのだが。
「んで、この子が紅一点、マネージャーの、」
「………」
「? 佑ちゃん?」
「、え?」
「自己紹介自己紹介」
「え、あ、……こ、」
こんにちはこんばんは初めまして
(やってしまった)
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SANDGLASS