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ゴールデンウィーク中、山口も月島もバレー部の合宿で家にいないのだと聞いた。あまり家に居たくない私は、休み中は大体山口の家で過ごすか出掛けている。しかし山口はこの長い休み中、家にいない。さてどうしようか。自分の席でうんうんと唸っていれば、谷っちゃんに心配された。しまった怖がらせてしまったようだ。私は大丈夫だと笑って、谷っちゃんに気づかれないよう溜息を吐き出した。クラスの子達は部活だか、家族旅行だとかでわいわい盛り上がっている。両親が仕事に感けて旅行なんて行ったことのない私には、ゴールデンウィークなんて長い休み、苦痛でしかない。
「(早く終われー、ゴールデンウィーク)」
浮かれた名前しやがって。
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ゴールデンウィーク中は家に一人っきりで、本当に何もすることがない。それなりの大きさの本棚を埋める本たちは全部読んでしまったものだし、買いに行くお金はないこともないが、お小遣い日前なのでこれ以上の使用は避けたい。することもなくだらだらと携帯をつついていれば、谷っちゃんからLINEが入った。『今から会えるかな??』とその内容に私は即効で了承の返信を返した。
今から谷っちゃんの家にお邪魔することになった。少ないお小遣いをはたいてバスに乗りやってきたそこは随分と立派なマンションで、私は少し茫然とそこを見上げた。着いたと連絡すると、暫くして谷っちゃんが降りてきた。私服姿も可愛かった。
「ごめんね急に呼んじゃって…」
「んや、いいよ。暇すぎて死にそうだったし」
「ほら、ゴールデンウィーク明けたら中間あるでしょ? 今のうちに勉強しとこうかなあって思って」
なるほど、確かにそうだった。私は電話で言われて持ってきた教材をちらりと見やって、納得する。谷っちゃんって真面目だなあ。というかなるほど、暇を紛らわすために勉強するって手もあったのか。帰ったら勉強しとこう。
谷っちゃんの部屋は、実に女の子らしくて可愛かった。シンプルで男の部屋みたい(月島談)な私の部屋とは大違いだ。適当な所に座って、教科書を広げる。他は平気なんだけどいつも英語が低いんだよなあ…
ちらりと谷っちゃんのノートを見る。、うわ。
「谷っちゃんのノートめっちゃ綺麗」
「えっ、そ、そうかな!?」
「うん、色分けとか私苦手なんだよね。うわ、見易いなあ」
感心してしまって、照れる谷っちゃんを褒めちぎる。なんというか、本当に女の子≠セ。
「お母さんがデザイン系の仕事やってて、レイアウトとかにはうるさくて」
「ふーん、そうなんだ…」
谷っちゃんがお母さんの仕事について嬉しそうに語り出した。私はそれをぼんやりと聞きながら、あることに気づいた。
そういえば、私お母さんの仕事もお父さんの仕事も知らないや。
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