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結局、山口と月島には一度も会わずにゴールデンウィークが明けた。月島はともかく山口にこんなに会わなかったのは久しぶりなのでなんだか変な感じがした。朝、山口に会うと尻尾と耳の幻覚が見える勢いで駆け寄ってきた。何だか少し、安心してしまった。
「青葉、ゴールデンウィーク一人で寂しくなかった?」
「友達といたから平気ですー」
「えっ、青葉に友達!?」
大層驚かれたので前友達できたって言ったじゃん、とギロリと睨めば、「本当だとは思ってなかった」と失礼なことを抜かしやがった。この野郎、本当に時々失礼だな。月島とは違って悪気0%だからまたタチが悪い。
暫くして月島と合流した。久しぶりに二人と並んで歩くのは、何だか心地よかった。
▽
「疲れてるの!! 分からないの!?」
家に帰って、一番に耳に飛び込んできたのは、「お帰り」という労いの言葉ではなく、そんな怒声だった。私は扉を開いた体勢のまま、動きを止めた。どうやら、またいつものパターンで喧嘩をしているようだ。ただ、今日は二人共帰るのが早い。珍しいことだ。たまに早く帰ってきたのなら、喧嘩をせずに普通の家族として話せないものか。
「なんでお前はいつもそうなんだ!!」
「あなただって!!」
二人の喧嘩を聞きたくなくて、私は耳を塞いで階段を駆け上がった。部屋の扉を閉めて、携帯を取り出した。電話をかける。
『…青葉? どうしたの?』
「…山口? 今大丈夫?」
『うん? 大丈夫だけど……何かあった?』
「何もない。何もないから、ちょっとだけ電話付き合って」
気付けば、先ほど別れたばかりの山口に電話をかけていた。バクバクとうるさかった心臓が、段々と落ち着いていく。山口の優しい声が「大丈夫だよ」と告げているようだった。
暫く他愛のない話をして、電話を切る。気がつくと喧嘩は止んでいて、家はシンと静まり返っていた。
06
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