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「ふぁ……」
大きな欠伸を漏らした。すると隣で「フッ」とバカにしたような笑い声。私はじとりと隣を見やった。私の隣の席に座るそいつは、私がそちらを見たのに気付き、更に馬鹿にしたような顔で「間抜け面」と私を嘲笑った。私はムカついたので彼の脛辺りを思い切り蹴ってやった。予想外の反撃だったのか、月島は顔を歪めて睨んできた。うん脛はまずかったなすまん。でも突っかかってきたあんたも悪いんだよ。
中学一年、最初の席替えで隣の席になってしまった私と月島。山口には「ツッキーも青葉も良いなぁ」と大層羨ましがられたが、何にも良くない。仲が悪いとは言わないが、こいつは暇さえあれば嫌味を言ってくる。私としては普通に付き合って行きたいのだけど。しかしどうやら月島蛍という男は、嫌味を言わなければ生きていけないらしい。こいつはもっと山口に感謝するべきだ。こんなにも嫌味やなんやらをぶつけておいてまだあぁしてついて回ってくれる子が、一体この世にどれほどいるのだろうか。
「…ってそれ私もじゃん」
「は?」
私も山口に嫌味やなんやらをぶつけ、更にシカトもしつつここまで来ている。私だって月島と大して変わらないじゃないか。本当にあいつは心が広いと思う。というよりかは、思い込みが激しいというのだろうか。そう思ったら一直線だ。手当てをした私を『優しい』と、いじめっ子を嘲笑った月島を『格好良い』と。ただただそう思い込んで一直線に私達について来ていた。
「……馬鹿だよなぁ」
「ちょっと、気持ち悪いんだけど。何一人でブツブツ言ってんの?」
「別にー」
「はぁ? 変な奴」
「あんたに言われたくないっつーのこの捻くれ野郎」
「ツッキー、青葉ー! って、またやってる」
仲良いね、なんて山口は笑った。
これが仲良いように見えるなら、山口の目は節穴である。しかし山口がなんだか嬉しそうで、否定する気にもなれずにそっぽを向いた。
私はなんだかんだで山口に甘いようだ。
04
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