顔がいい奴の周りに人は集まる
これこの世の真理ね

「ぅわっ、」

 バサバサ、と、まるで少女漫画のような光景が俺の横で繰り広げられていた。靴箱に大量の手紙とプレゼントが、なんてまさか現実でこんな光景を見ることになろうとは、イケメンの幼なじみを持った俺も思いもしていなかった。とはいえ別に毎日こんな光景を見ているわけではない。今日は夏休みに入る前日。だからどうしたと思うかもしれないが、しかし嵐山ファンにとっては今日ほど大事な日はない。准の誕生日は7月29日、つまり夏休み真っ最中なのだ。つまり准に誕生日プレゼントを直接渡せるのは今日しかない、とそういう事だ。
 プレゼントを落としてしまったことを申し訳なく思っているのか、慌てて手紙と包みを拾い集める准に息を吐き出し、俺も仕方なく拾うのを手伝ってやる。「ありがとな」と二カリと悪意のない笑顔でお礼を言われるのは悪い気はしないが、他の奴らみたいに絆されたりはしない。毎年の事なのに袋も何も持ってきていないしっかりしてるんだか抜けているんだか分からない幼なじみの代わりに持ってきた袋を取り出すと、「おぉ、流石だな! 日向!」なんて言われて少し苛つく。こいつの場合これに悪意がないから更にムカつく。
 ちらりと見えた差出人の名前は書いていないのもあるが殆どが女子で、知っている名前もあれば知らない名前もある。全く、この世に誕生日だからといってこれだけのプレゼントを貰える人間がどれほどいるのだろうか。きっと人類の3分の1もいない事だろう。

「おー、今年も凄いな、嵐山」
「! 迅! おはよう!」
「おはよ。大丈夫か?」
「………」

 出た。俺は内心で舌打ちをして、顔を見られないようそいつから顔を背けた。そしてまだ教室にあるだろうプレゼントに備えもう一枚持ってきていた紙袋を准に押し付け、俺は立ち上がる。プレゼントそれに入れろよ、と言葉だけ残し、そいつから逃げるように俺は教室へ向かった。

「あっ、日向!」
「せーぜー重たい荷物提げてろよばーか」

 あいつには関わりたくない。


 ▽


「日向は迅が嫌いなのか?」
「あぁ嫌いだね。近づけないように頼むよ」

 「そうか…」と残念そうな准を横目で見て、俺は机に突っ伏した。迅……迅悠一は准と同じボーダー≠ニいう界境防衛機関に所属しており、何か見た目が准とそっくりなつまりはただのイケメン≠セ。しかしまぁ性格は准とはあまり似ておらず、食えない印象を受けた。昔から准のような真っ直ぐな奴と一緒にいた俺はあぁいった奴が苦手だ―――というのはまぁタテマエで、これ以上イケメンとつるみたくなかった。准と一緒にいるだけでも女子から文句を言われるのに、更にとか面倒くさい。あんたみたいなフツメンが―――なんて。余計なお世話だっつーの。お前らみたいなブスに言われる筋合いはない。と、まぁ言ってやったわけだが。勿論平手打ちされた。准は暴力女嫌いだぞ、と俺の減らず口は止まらなかったのだけど。
 今だってこうして一緒にいるだけで周りからの視線が痛いほど突き刺さる。本当、顔がいい奴は大変だな。

「その………迅は良い奴だし、日向にも仲良くしてほしいっていうか、」
「ハッ、絶対嫌だね」
「………そうか……」

 心なしか垂れた犬の耳が見える。女子達はそれすらも萌えの対象であるらしく、きゃあきゃあと騒いでいる。あぁウザってぇな畜生。

「准ウゼェ」
「でも、」
「あーハイハイ。これやるから黙れよ」
「!」
「誕生日オメデトウ」

 ポイ、と買ってから鞄に入れっぱなしにしていたプレゼントを投げ付けた。別に当日に渡そうが今渡そうが結局相手に渡るんだから関係ない。しかし不満そうな顔をする准はどうやら当日に渡して欲しかったらしい。

「日向は当日に会えるのに」
「会わねーよダリィ。夏休みは寝まくるの」
「えっ、祝ってくれないのか?」
「女子か!」

 しかしどうせ当日は家ぐるみで准のパーティをするのだろう。まぁ俺は副と佐補の相手をさせられるのだろうけど。別に准の誕生日パーティをするのは構わないのだが、一緒に俺の誕生日パーティをするのは止めてもらいたい。小学生じゃあるまいし、なんで高校生になってまで祝ってもらわなければならないのか。ちなみに准の3日前が俺の誕生日である。俺も今日適当につるんでいるクラスメートから何個かプレゼントは貰ったが、とは言っても購買のパンとか自販機のジュースである。准のようにしっかりと綺麗にラッピングされたプレゼントなんて貰っていない。本当馬鹿馬鹿しくなる。

「……日向」
「何だよ」
「ありがとうな」
「……フン」

 さてさて、こいつはどんなプレゼントをくれるのやら。